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トラがすぐに私の前の席の人に声をかけた。
「ここ、空いてるか？」
「！はい！」
女の人だ。椅子の隙間から、めっちゃ笑顔で頬染めてるのが何となく分かる。
『あ、座って良いか聞かずに座った･･･』
すぐにトラが座るものだから、思わず心の声が漏れる。
トラが私に顔を向けて得意気な表情をした。
「俺が隣に座るのに、断る奴はいないだろう？」
わあ、俺様発言。いっそ清々しい位だけど。
呆れが表情に出ていたのか、トラが少し気まずそうな顔をする。
「まあAの隣は、座ると自分が痛い目にあうからな」
それは百のことを言ってるのかな？
別に隣に座ったからって痛い目みないと思うけど。
『そんなことないと思うけど』
「千が睨むんだよ」
『そう･･･それはごめんね･･･』
千か。睨みそうにはないけど、そういやトラは苦手だっけ。
ヤマさんの千に対する思いとは違う感じで。
初めてNEXT Re:vale出た時のが尾を引いてるのかな？それ以外に“私は”思い当たらない。
ふいと後ろのトウマの様子を見ようとすると、トウマと目が合う。
トウマ、明らかにめっちゃハラハラしてる。
『トラが心配？』
まあトラが心配というより、トラが女の人を口説くか心配、ってことだと思うけど。
トウマは頬が少しひきつりながら口を開く。
「だ･･･大丈夫っすよ。最近じゃ女遊びもなくて･･･」
「めっちゃ信用ねえって顔に書いてんじゃねえか」
スパッとツッコんだみっちゃん。
みっちゃんが言わなかったら私が言ってたかも。
『じゃあ私の隣空いてるからおいで。そこよりも少しは見張れると思うよ』
「え･･･っ」
ビクッとするように強張るトウマ。･･･私なんかしたっけ？
『何その反応』
「えっ？いや、その･･･」
『別に怖い事しないよ？』
「A、言い方が怖いぞ」
『ええ？かわいい後輩は可愛がるよ？』
微妙そうな表情のみっちゃんの言葉に、当然のような顔で返す。
そうちゃんが考えるように、握った手を顎に当てて口を開いた。
「僕はトウマの気持ちはわかるよ。大先輩のRe:valeさんの隣って、畏れ多くてすぐには座れないよね」
『ああ、なんだ。そんなこと』
停まってるバスに乗ってくる人がいないことを確認して、トウマの腕を取る。
「･･･えっ」
『私は百や千みたいに大したもんじゃないから大丈夫よ』
「いや、かなり大したお人っすけど･･･」
『窓際？通路側？』
「Aさんー･･･」
トウマが少し困ったような表情をした。
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作者名：miz | 作成日時：2021年9月6日 8時
