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だけど脚本が撮影に間に合わないのもスケジュール的にキツイので、前後編として冊子にして、脚本として完成した分から配った、というのが真実らしかった。

トウマの犯人も見てみたかったなーと思うものの、ドラマ初心者なだけでなく、根本的な所が優しいトウマが犯人って意外性しかない。
だから逆に面白いかもって思っちゃうけど。

ということで、明日の夕方からは、犯人と被害者の対決シーンが撮影される。
できればコテージに残らないでいただきたい、という指示の下、エレクトーンを弾きに行くのだ。

「もしよかったら、あの子と私も一緒に行っていい?」

ナオコさんが女の子を指差す。

いい気分転換になるかも知れない。
ナオコさんにとっても女の子にとっても。

『もちろん』

私は笑顔で頷いた。



・・・「へえ。女の子の泣き声だったんだ」

夜、百といつもの電話。
百の背景が、百の家であることを物語ってる。

千んちに行ってないんだろうなあ。

『うん。明日はエレクトーン弾きに行けるんだけど、一緒に行って、ここなちゃんの曲弾いてあげる約束したんだ』
・・・「お、ここなちゃん好きの子?女の子なら一度は通る道だね!」
『だからみっちゃんが大好きだって、今日知った』
・・・「ここなちゃんのボーイフレンドだから?」
『そうそう』

笑顔で頷くと、百も優しげに目を細めた後でニカッと笑う。

『そういえば百はご飯どうしてるの?どっか食べに行ってる?』

千のとこに行ってないなら多分食べに行ってそうだ。

でも私は百の食事を心配してるんじゃない。
百が業界の人と外食して、飲みすぎたり無理したりしないかを心配している。
昔と今の業界の形態は変わったけど、付き合いが変わるわけじゃない。
いい付き合いも悪い付き合いもある。

・・・「食べに行ってるよ。大和と楽と龍ちゃんが多いかな」
『あ、そうなんだ』

ホッとした。
よく行くメンバーだ。

・・・「あとはバラエティの人たち」
『番組あった時?』

そうそう、と百が軽く頷く。
心配し過ぎたかな。

そこからは他愛ない話して、今日は泣き声も聞こえないのに、私が寝付くまでテレビ電話はついたままだった。

次の日の夕方、スタッフさんの運転で音楽教室に連れて行ってもらう。
ご飯の時間になったら迎えに来ると言って、ホテルに帰っていった。

残されたのはナオコさんと女の子と、そうちゃんと私。そうちゃんはピアノを借りるらしい。
みっちゃんはトウマと他の共演者の人と、遊びに行った。

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作者名:miz | 作成日時:2021年9月6日 8時

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