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自分の口元に指先を当てて、パッと百に向けて放つ。
「!!投げキッス・・・!!」
目をキラキラさせて満面の笑みになった百が、一瞬で照れ笑いした。
「そんなことされたら大人しく見送るしかないじゃんか!」
『是非そうして下さい』
「ああああ〜もう、ヤスのファンサで投げキッス見たことあるけど、Aだと破壊力あれ以上に半端ない・・・」
ヤスの?・・・ああ、ヤスのラストライブか。そんなこともあったなぁ・・・
嬉しそうにニヤケてる百に、今度こそ行ってきますと玄関のドアノブに手をかけた。
「帰ってきたら、ちゃんと口にしてもらうからね!これで許したげる!行ってらっしゃい!」
嬉しそうに言う百。
許したげるって、充分満足してそうな顔だと思うけど?
と思うものの、さすがに時間がヤバくなってきて慌てて手を振って、マンションを出た。
大通りでタクシーを拾って集合場所へ向かう。
というかさっき百、帰ってきたら口にしてもらうって言ってなかった?
私からするって恥ずかしくて出来ないから、投げる方にしたのに。
出来るのには、心の準備というものと勢いがですね・・・!!
・・・心の準備しとけってことか。
決めたら中々譲らないからなあ・・・
タクシーの中で、帰ってきた時を考えて困っているうちに集合場所に着く。
既にスタッフや共演者の人たちが集まっていた。
挨拶をしていくと、貸し切りバスを案内してくれるスタッフについていく。
貸し切りバスの運転手さんが荷物を預かってくれた。
「お、A。おはよ。ここ座るか?」
「Aさん、おはようございます」
『みっちゃんとそうちゃん、おはよう。座る座る』
座席は自由。
窓際に座るそうちゃんと、通路側に座るみっちゃん。通路を挟んだ反対側の空いてる席を勧めてくれた。
席に座ってからRe:valeのグループラビチャに、集合場所に着いた事と、間に合った事を打って送信。
スマホに陰がかかって、通路で人が止まった事に気づいて顔を上げた。
「おはよう」
「トウマ、おはよう。御堂さんもおはようございます。」
トウマとトラだ。
こっちは見えてないらしい。
4人がそれぞれ挨拶を終えると、2人の後ろがつかえ始めた。
『近くの空いてるとこ座ったら?』
トウマとトラは驚いたらしく、反射的にこっちを見た目はまん丸だった。
挨拶を交わしてから私の後ろにトウマが座る。
「トラ、おまえも座れよ」
「いや、俺は違う所に座る」
トラがキョロッと周りを見渡した。
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作者名:miz | 作成日時:2021年9月6日 8時