208 〜天side〜 ページ10
ゼロアリーナを眺めながら、この先、ボクがする予定の事を思う。
四葉環とAさんと約束した2月までは、あと約半年。
「･･･今は遠いな、ゼロアリーナ。」
そう呟くと同時に“天にぃ！”という声が聞こえてきて、そっちに体を向けた。
「･･････。陸･･･」
いつぶりだろう。
思いは言葉にならなくて、陸の言葉に頷いて、同じように返したりしか出来ない。
目も合わせられなくて顔も上げられない。
Aさんはボクを好きでいてくれるけど、陸はボクに失望したと思うから。
そう思っていたのに。
「天にぃが･･･。歌、歌ってて良かったって、言ってて、嬉しかった･･･」
驚いて顔を上げて陸を見る。
陸は嬉しそうな笑顔でボクも見ていた。
･･･そうか。
良かった。
ホッとして、２人でゼロアリーナに目をやる。
少しすると陸が、MOPが終わったら家に帰っておいでと言った。
本当の意味での帰るじゃなく、ちょっと顔を出すだけだという意味らしい。
「･･･もう、ボクの両親じゃないよ。」
「天にぃの家族だよ。」
･･･困る。
わかってる。
困るのは、嬉しいと思っているからだ。
でもボクはまだ、成し遂げていない目標がある。
九条さんとの約束。
それまでは、顔を出せない。
そう思っていると、陸が賭けをしようとしてきたから、ファンのため以外に歌う意味を持たせるべきじゃない事を説明した。
お互いの願いを、お互いが叶えることが出来ないことも
陸がファンのため以外で歌っていた気持ちは、ボクは理解しようと思わないことも
ボクにとってファンは“お客さん”。愛すべきお客さん。
もてなして当然。
それはいつだって変わらない。
例え恋人が出来たとしても。
「昔とは立場が違うんだよ！？今はオレじゃなくて、天にぃの方が不自由で困ってるんだ！」
「決めつけないで。」
「決めつけじゃないだろ！？みんな言ってるよ！TRIGGERは大変･･･」
「だからといって、陸に助けてほしくはない。」
こうでも言わないと、陸はファンに共感して貰うことを止めないだろう、そう思って言った言葉だった。
陸は“ふざけるなよ！”って怒ったけど、悔しそうに俯いて言った言葉はボクには聞こえなかった。
かと思えば顔を上げてボクを睨む。
「･･･もう、頭に来た･･･！MOPで１位になって、ブラホワでも勝ち残って、Re:valeを抜いて日本一になってやる！」
急に何･･･？
ポカンとしたボクに構うことなく、陸は拳を上げて言葉を続けた。
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作者名：miz | 作成日時：2020年12月22日 9時
