204 〜天side〜 ページ6
お互いの唇が触れる前に、ドアをドンドン叩く音がした。
「天、A！冷めるぞ、メシ！」
パチッとお互いに開いた目。
一瞬見合って固まる。
･･･楽･･･
「･･･ッチッ」
『天、舌打ち･･･』
Aさんが苦笑いした。
「全く。あと5秒位待てないの？」
『いや、中が見えてたら恥ずかしすぎて泣くけど。』
何だか通常の雰囲気に戻ってしまった。
息を吐いて、ドアの方に顔を向けた。
「今行くから！」
「早く来いよ。」
やれやれと思いながら立とうとした所で、ボクの袖をAさんがクイクイと引っ張った。
「何？･･･ッ」
Aさんがボクの両頬に手を添える。
気づけば唇が触れあっていた。
目をぎゅっと閉じたAさん。
勇気出してくれたんだ。
仕切り直しが出来なくて、ボクが文句言ってたから。楽に対してだけど。
そっと目を閉じて受け入れる。
今度は、よくわからなくなったりはしなかった。
・
『美味しい！！龍ちゃん天才！』
満面の笑顔で、龍が中心となって作ったご飯を食べるAさん。
照れてる龍と、ユキも天才だよとフォローする百さんと、その横で野菜料理を黙々食べてる千さん。
楽とボクは、というと･･･
「おまえら遅いんだよ。」
「そっちは空気読みなよ。」
でも楽が来たおかげで、Aさんの知らなかった一面を見れたんだなと思い直す。
でも邪魔したのは紛れもない事実。
「龍、ごめんね。せっかくのご飯、温めなおしてもらって。」
「大丈夫。みんなで食べた方が美味しいもんね。」
龍がニコッと笑う。
「ありがとう。百さんも千さんも、待っていただいてありがとうございました。」
「俺に礼は？」
「“呼びに来てくれてありがとう”」
ボクの楽に対するお礼の言葉、絶対トゲトゲしい自覚はある。
「顔が、ありがとうっつってねえんだよ。」
楽も怒りマークをつけて応戦してきた。
「まあまあ、２人共。お腹減ってるだろ。食べよう。」
龍がいつものように仲裁に入る。
楽とボクは一転して、取り分けてくれた料理に手をつけた。
笑顔で食事を食べてるAさんを見る。
ボクの部屋を出てから、気恥ずかしくて一言も喋ってない。
今までドラマとかでキスシーンがあっても、フリをしてきたから、事後がここまで恥ずかしいものだなんて知らなかった。
ふつふつ思い起こされるさっきの感触。
自然とAさんの唇に目がいく。
何してるのボク。
思春期の男子じゃあるまいし･･･って実際ボクの年齢は思春期か。
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作者名：miz | 作成日時：2020年12月22日 9時
