246 〜天side〜 ページ48
周りの人がいなくなったのを良いことに、ずっと気になってた事をひそひそと口にして、Aさんの髪の毛を摘まんだ。
･･･Aさんの髪の毛より硬い？
「･･･カツラ･･･？」
『うん。･･･でも天が女装じゃないから、化粧室で着替えてからレストラン行く。』
だから先に行っててと言って苦笑するAさん。
なるほど？
バレないようにというのが最大優先事項としても、一応男女としてデートにする気はあったんだ。
でも着替えるって･･･
何に？
Aさんが持ってる鞄は、いつもより大きいけど、そこまで色々入ってるようには見えない。
首を傾げつつも、照明がつく前に映画館を出て、予定通りのレストランへ先に行く。
少しして個室に通されてきたAさんの恰好は、ちゃんと女性だった。
というか、トップスは変わらないけど、ボトムスがスカートに変わってる。
カツラも･･･あれ？エクステ？カツラ？
長いウェーブの髪型。
ふと目が合うと、Aさんの目が大きく見開かれた。
『わ。明るい所で見ると天じゃないみたい。化けたね。』
「Aさんも。さっきと違う。ボトムスもカツラもその鞄に入るようにも思えないんだけど。」
『ああ、これ？細かい三つ編みにしてカツラの裏側に入れてたんだよね。三つ編みほどいて出しただけだよ。』
身振り手振りで説明してくれた。
メニューを決めて注文を終えると、Aさんが満面の笑顔でボクを見る。
『何か緊張でドキドキしてたんだけど、何とかなってるね。楽しい！』
「楽しい？」
『うん。･･･こんな風にデート･･･もどき？みたいなのだけど、天と出来るなんて前は思ってなかったから。』
嬉しそうなAさんの笑顔がボクにも伝染する。
「そうだね。女性と2人っていう事自体がボクには有り得なかったから。」
お互いに微笑み合う。
今が幸せだと思えると、お互いに感じているのが伝わった。
料理が来ると、カツラは誰発案？って聞いたら、百さんが歌えなくなった時に、Aさんが朝食を百さんに配達するために一時期やってたとか。
女装男装も百さんと千さん発案。
『私は、天が女装するかどうか微妙な所だと思ったんだよね。楽しそうだけど。』
「女装は楽しくはない。」
ヘアスプレーとかフェイスクリームはAさんが考えたらしい。
楽しんだもの勝ちな発想とかは、本当にRe:valeの専売特許だなとも思うけど、流されて付き合うのは楽しいかもしれないかな。
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作者名：miz | 作成日時：2020年12月22日 9時
