202 〜天side〜 ページ4
「･･･Aさんの部屋、本なかったよね、そう言えば。」
『あ、寝室に本棚があるよ。結構大きいの。』
これ位〜と言いながらAさんが体で大きさを表す。
必死さが伝わって可愛い。
クスッと笑ってAさんを見ると、その向こうのボクのベッドが視界に入る。
慌てて視線を逸らした。
『？天？』
不思議そうな顔でボクに近づくAさん。
前にボクがAさんの家に行った時には、物凄く固まってたのに、今日はその片鱗さえ見当たらない。
みんながドアの向こうにいるから？
ボクだけドキ ドキしてる。
ちょっと悔しい。
少しでもドキ ドキしてほしくて、さっき早合点しそうだったことを思い出す。
「･･･ねえ。」
『ん？』
「･･･さっき、千さんの家に泊まらなかった理由、聞いても良い？」
Aさんと目を合わせる。
ポカンとした表情の後、Aさんが一瞬で焦ったように言った。
『いや、深い意味はないよ！？』
「うん。それでも聞きたい。」
笑顔のまま答えを待つ。
中々Aさんの口が開かない。
早く答えてくれないと、呼びに来そうな気がする。楽あたりが。
百さんや龍は止めてくれそうだけど。
千さんはよくわからない。
「Aさん。」
Aさんは、言いにくそうに唸るも、おずおず口を開いた。
『私が･･･』
「うん。」
『･･･天の立場なら、いい気分じゃないかなと･･･思って･･･』
「･･･どう、いい気分じゃないの？」
ちょっと意地悪かな。
でも、聞きたい。
Aさんに近づくと見上げられる。というより若干恨めしそうに睨まれてるのかも。
『･･･天、なんかわかってる気がする･･･』
「そう？」
自分が想像した通りの答えになるのを感じて、思わず笑みがこぼれた。
ああ、こういう所、好き。
こんな表情も好き。
付き合わなければ知らなかったAさんの素顔を見れることが嬉しい。
ふわっとAさんを抱きしめることに成功する。
Aさんの両腕が、ボクとAさんの間に埋まる。
「教えて。」
『･･･意地悪。』
･･･可愛い言い方だけど。
仕方ないな。
ボクから折れよう。
「･･･いくら百さんや千さんといえども、ボク以外の男性のベッドに寝るのは嫌だと、ボクが言うと思った？」
きっとAさんはボクの事を考えて、そう思ってくれたんだと思った。
少し体を離してAさんの表情で答えを出そうとすると、Aさんの耳が赤く染まっているのに気づいた。
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作者名：miz | 作成日時：2020年12月22日 9時
