201 〜天side〜 ページ3
「別にAがホテルに泊まる必要はないって、僕は言ってたんだけどね。」
千さんがそう言いながらコタツを出て、龍がいるキッチンへ行く。
Aさんも手伝うと言いながらキッチンへ行った。
「どうしてですか？SNSには、IDOLiSH7の寮周辺にファンの数が多い事が書かれてますし、ホテルに泊まらなければ今頃家から一歩も出れない状況があることは安易に考えられますよ。」
ボクが言うと百さんが、そうじゃなくて、と説明してくれる。
「ユキがオレんちに泊まって、Aはユキんちに１人で泊まれば問題ないじゃん。って言ったんだ。オレは自分ちに帰ればいいし。でもそういう事じゃないんだって。」
目を見開いてAさんがいる方を見た。
視線が合う。
照れたような苦笑いをするAさん。
「じゃあどういう事っすか？」
「わかんない。」
楽と百さんが首を傾げながら言ってる言葉が、近いのに遠く聞こえる。
胸が熱い。
自分の緩んだ表情と顔色がバレたくなくて、コタツから出て口元を隠す。
「･･･天？どったの？」
「ちょっと･･･自分の部屋に用事を思い出したので･･･」
「あ、ご飯出来たら呼ぶね！」
龍の言葉に、振り返らずに頷いて自室に入ると、はあ、と深呼吸した。
ボクの早とちりかもしれない。
安易に早合点しちゃいけない。
でも幸せな解釈をしてしまう。
しばらく心を落ち着かせようとしていると、ドアがノックされた。
『天？もう少しでご飯出来るよ。』
わかったと言おうとして、そういえばボクの部屋見てみたいって言ってたなと思い出しながらドア開けると、Aさんがニコッと笑う。
『行こ。』
「待って。」
Aさんの腕を取って、ゆっくりボクの部屋に招いた。
「見てみたいって言ってたでしょ？特に何の変哲もない部屋だけど。」
九条の家のように本がたくさんあるわけでもない。
必要最低限の物だけだけど、居心地の良い部屋。
『･･･本が少ないんだね。何か意外。』
「意外？」
『うん。たくさん本読んでるよね。陸も天も元々よく読むけど。』
確かに昔から２人してよく読んだな。
陸は入院が多くて１人の時には読んでたりしたし、ボクも家で１人だと読んでた。
「ふふ、そうだね。懐かしい。」
『うん。私と読むジャンルが重なるのは稀だったよね。今は色々読むけど。』
「何読むようになったの？」
『ええとね･･･』
Aさんがドラマや映画になったタイトルや、エッセイを中心としたラインナップを教えてくれた。
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作者名：miz | 作成日時：2020年12月22日 9時
