216 〜天side〜 ページ18
･･･『･･･そう。わかった。期間も話そうと思ったけど無理みたいね。･･･っじゃあね！』
怒気をはらむAさんの声。
プツッと電話が切れる。
盛大なため息をついて、ベッドへ横になった。
売り言葉に買い言葉。
でも全部本心ではある。
言い過ぎたかも知れないけど。
いや、Aさんが悪い。
距離を置くなんて。
九条さんに、Aさんとの関係は最大限気をつけてるから、ボクが付き合いたいと思ったし誠実にたった１人を好きなんだから大丈夫だと思うと、必死になって伝えたのに。
それが全部、意味がなかったかのような気分。
どうして九条さんの言葉に折れたの。
ボクの存在って、その程度？
“Aちゃんと天って喧嘩するイメージなかったから”
龍の言葉を思い出す。
確かに、ここまでの言い合いっていうか喧嘩って、初めてだな。
言い知れない気持ちを抱えながら、荷造りを再開させた。
・
「何だよ。ライブん時と今で、エライ違いだな、天。」
大阪でお土産を見てる時に、楽が呆れたように言った。
「別に。いつもと同じだけど。」
「ああ、でも大阪くる前から、何となく機嫌悪いよね。」
「そう？でも仕事はきちんと全うしてるでしょ？」
Aさんと喧嘩したからだと、女々しく言うつもりはない。
愚痴しか出てこなくなりそうなのも嫌だし。
いや、それ以上に好きな所もあるけど、それでも今回ばかりは譲れないというか･･･
「お。あれあるぜ。豚まん。天、Aにはあれ買って行･･･」
「Re:valeさん全員分頼まれたのでいいでしょ。いらない。」
楽が笑顔で店を指差しながら言った言葉に、被せるように返す。
考えたくない。
今は。
「･･･あれ、Aと何かあったな。」
「あはは･･･珍しいなあ。大丈夫かな？」
心配そうな表情をしてボクの背中を見ている龍と楽から少し離れて、焼きドーナツのお土産を買う。
自分用。
陸にも何か買っていこうかと物色していると、店先で綺麗なネイルシールやネイルチップが売ってあるのを見つけた。
このネイルシール、Aさんに似合いそう。
こっちのネイルチップはヤスさん用によさそう。ちょうど百さんや千さんと同じように、瞳の色と同じネイルの色になってるし。
いつもヤスさんとAさんの切り替えの時、毎回ネイル剥がしてて大変だろうし。
ーーって！
我ながら呆れる。
考えたくなくても浮かぶAさん。
どれ程ボクの心を占めているか。
自然と眉が下がって頬が緩んだ。
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作者名：miz | 作成日時：2020年12月22日 9時
