211 〜天side〜 ページ13
『ちょっとお手洗い･･･』
「Aさん。」
そろっとボクの横から逃げようとする体勢になるAさんの腕を、ガッと掴んだ。
「言って。怪我とかしてないよね。」
『･･･はい･･･』
スゴむボクに、Aさんは大人しくボクの横に座り直した。
Aさんは、百さんと月雲社長が百さんの家にいることを知って、ただ事でない危険があると思って、以前ボクらを拉 致した一味の１人と連絡を取って、百さんを救おうとしたらしい。
Aさんの頭をわしづかみ。
多分ボクの目は今、光ってる。
「なにしてるの。変な人と連絡取らないで。無茶しないで。」
『い、痛い痛い！天、力強いよ！？』
「いい？もうこういう事しないで。」
手をぱっと離して言うも、Aさんは微妙そうな表情。
「何。もう一度わしづかみされたい？」
『だって、絶対しないって言い切ったりは、出来な･･･』
「は？」
『！！分かった！そんな怖い顔しないで！』
ボクの気迫に圧されてか、ごめん！と謝ってくれるも、気まずいのか、すぐに元の席に逃げていくAさん。
怒らないわけがない。
あの様子は、絶対にその場を繕うための言葉でしょ。
ボクが何に怒ってるのかわかってるの？
ボクを好きなら自分を大事にして。
ボクがどれだけ大事に思ってるのかわかって。
結局あのまま、口をきくことはなかった。
そして、Aさんもいつも通りと言えばいつも通りで九条さんの話をするわけでもなかったし、九条さんに関してイタズラに心配かけるのもどうかと思って、ラビチャもしてないけど。
というよりも、ボクがどれだけ心配してるのか分かってないよね。
「て、天･･･また顔が･･･」
龍の苦笑いに、意識が戻される。
「元からこういう顔。」
「Aと打ち上げで話してた時なんて、悪魔の形相だったぞ。」
「鬼じゃなくて？天使だって言われてるから？」
龍の問いに、楽が真面目な顔で頷いた。
鬼でも悪魔でもどっちでもいい。
今だけは。
ボクが大きくため息をつくと同時に、誰かのスマホが鳴った。
「誰のだ？」
「あ、ボクの･･･」
Aさんかな。
結局終始ボクが怒ってたから。
スマホの画面を見て固まる。
そっとそのままクッションの下に隠した。
龍「え？出ないの？誰？」
「Aじゃないのか？貸せ。」
楽がクッションを取り上げてボクのスマホを取る。
「･･･っ、やめて･･･っ」
「･･･九条だ。出ろよ。それで、Aと付き合ってく事も含めて話せ。」
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作者名：miz | 作成日時：2020年12月22日 9時
