158 （父親を嫌う理由） ページ8
･･･「環に色気感じたのか･･･」
ポツリと言った三月くん。
『ん？･･･うん？』
会話が途切れて違和感に気づく。
あかんかった？？
『･･･ああ！男の人として好きって思ってるのとは違うよ！？』
･･･「え！？いや、そこまでは思ってねえけど･･･その、Aから見たら環の方が男として魅力あんのかなって思ってさ。」
わあ、やっぱり落ち込んでそうな声色。
さっきまでの明るい声と違う。
･･･ヤキモチ？
可愛い。
『色気があるイコール男の人としての魅力、ではないよ。三月くんは、色っぽい女の人イコール女の人としての魅力になる？』
･･･「いや？それは別だな。」
『なら良かった。私は色気ないから。』
･･･「･･･そうか？」
『ないない。』
笑って言うと、オレもないな〜と、スマホから、三月くんがやっと笑ったような声が聞こえた。
背が低いから中高生に見られるし、色気どころの話なんて一度もない。
たっくんにだって色気がとか言われた事はない。
気にもしてなかったけど。
それから三月くんがスマホの向こうで、タクシーに乗ってマンションに着くまで、ずっと話をしていた。
朝。
のんびり起きて朝食取ってから、おばあちゃんと買い物に出かけた。
健康のために毎日出かけるようにしてるらしく、歩く距離が意外と長い。
「あんた上京して運動せえへんのやろ。体なまってるわ。」
『おばあちゃんこそ年やのに、よう体力持つわ･･･』
ついでに言えば、私の方が重いの持ってるんやけど！
帰り道、ゼーハー言いながら歩く。
平坦な道が多いし田舎町ではないけど、バス使わんと歩くのはキツい。
『せめて自転車乗りたい･･･』
ポツリと呟いて少し休憩。
その時に近くの路肩に車が停まった。
「乗りませんか？」
『･･･おばさん･･･』
先輩のお母さんは、両眉を下げながら微笑む。
おばあちゃんを見ると、そっぽを向いて知らん振り。
･･･乗りたい。
おばさんをチラッと見ると、それに気づいたおばさんが笑って言った。
「私と会話しなくて良いですよ。でもAちゃんのために、家まで送らせてもらえませんか？」
おばあちゃんを見て、ツンツンと腕をつつく。
『おばあちゃん、今日だけお言葉に甘えてもいいやろ？』
おばあちゃんは私を一瞥して深くため息をついた。
かと思うと、おばさんの車の後部座席を開ける。
おばさんと目を合わせて、同時にピースして笑った。
案の定、車の中で、おばあちゃんは全く喋らなかった。
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作者名：miz | 作成日時：2020年11月19日 8時
