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『おお、ここが三月くんたちの･･･』
マンションを見上げる。
先輩のマンションより見るからに階数は高くないけど、先輩のマンションより横に大きい。
時間差で来てと言って先にマンションに入った三月くんを見送った。
周辺をブラブラして、人の目を少し気にしながらマンションのエントランスで、さっき聞いた部屋番号を押す。
部屋への行き方を聞いてから向かった。
っていうか、たっくん以外の男の人の部屋って初めて。
前に寮は行ったことあるけど、リビングだけだったしなあ。
三月くんの部屋って想像つかない。
ナギくんなら、ここなちゃんが沢山ありそうやけども。
インターホンを押すと、少ししてドアが開く。
「おー、どうぞー。」
『おじゃまします。』
手洗いうがいしてからリビングに入ると、2人で暮らしてるからなのか、意外と広い。
いや、先輩のとこと広さは変わらないような･･･？
というかナギくんは？
今いないの？
「今簡単に準備してんだ。すぐ出来るから、待ってな。」
『あ、手伝う。手伝いたい！』
荷物を置いて腕まくり。
三月くんのいるキッチンに入ると、三月くんが唸っていた。
「A、あんま作らねえんだよな？野菜切ったりとか炒めたりとか出来る？」
『出来るよ。･･･それなりだけど。材料が余るのが勿体ないから作らないだけで･･･』
っていうか、作らないのは使いきれないとか面倒くさいのもあるけど。
味も、売ってる奴の方が美味しいし。
じゃあこれ剥いてと、洗った人参とピーラーが渡された。
どんだけ料理が出来ない子って思われてるんやろ？
いや、得意やないけど。
ピーラーで人参の皮を剥いてると、三月くんが口を開いた。
「その･･･今日観に来たの、どうだった？」
私と目が合うわけでなく。
洗ったゴボウを切ってる。
でも表情はいつものように明るい訳じゃなく･･･
そこ心中を思うと、キュッと胸が鳴った。
『面白かったし、格好良かったよ。』
三月くんが手を止めて私を見る。
『最初、先輩から連絡もらった時はちょっと迷ったんだけど、どんな三月くんでも知りたいなっていうのは根底にあって。一回観て、遠く感じるかとか考えるいい機会かなと。』
人参の皮を剥き終わる。
三月くんの方を向いて微笑んだ。
『だけど、遠く感じなかったよ。それよりも知りたいって気持ちの方が大きかった。私、三月くんの事もっと知りたい。色んな顔見たい。･･･でも無理強いはしたくないけど。』
そう言って苦笑した。
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作者名：miz | 作成日時：2020年11月19日 8時
