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『悪く言われんの嫌やで。』
「いいって。放っとけって。気にすんな。オレは平気だから。」
『平気なわけないやん！』
言い合いが始まった三月くんと私の状態に、ナンパ男が離れようとする。
その袖をグッと掴んだ。
『待ちや。少なくともアンタみたいに、初対面で見た目だけで判断するような人ちゃうねん。こう見えて彼も私も立派な大人や。謝り。』
大声を上げたくなる所やけど、注目を浴びたら三月くんが困る。
でもせめて謝らせたい。
三月くんが傷つかへんとは思わんから。
ナンパ男は嫌そうな顔をして私の手を振り払う。
「はいはい。すみませんでしたぁ。」
そう言って手を振って店内のテーブル席にいる友達っぽい男性の集団の方へいく。
『あんなん、全然謝ってへんやん。』
「いいって。A、店出ようぜ。」
納得いかへんと三月くんに言おうとして、私の肩に手を置く三月くんを見ると･･･
『･･･なんで笑ってんの。』
嬉しそうにニコニコした三月くんがいた。
「いやあ、嬉しかったから。」
お会計を済ませて店を出て、地下から地上への階段をのぼる。
三月くんが私を振り返って笑った。
「女に庇われんの、かっこ悪ぃって思ってたけど、嬉しかった。ありがとな。」
『めっちゃ腹立ってんもん。』
三月くんを追い越して振り返る。
『でも今、三月くんが笑顔なんやったら、何でも良いわ。でも･･･』
「ん？」
『三月くんもナンパ男と私の間に立ってくれたやん？私も嬉しかった。』
「･･･っ」
笑顔で言うと、三月くんが何故か固まる。
階段を上らない三月くんを不思議に思って、三月くんの一段上まで戻ってきた。
『どしたん？』
「･･･いや･･･なんつーか･･･距離近えなって思って、割って入っただけで･･･」
次はこっちがキョトン。
『･･･ヤキモチ･･･』
「･･･っ、行こう。」
帽子のつばを持って、恥ずかしそうに、より深く被る三月くんが階段をのぼる。
嬉しくなって笑顔で頷いてから、追いかけるように私も階段をのぼった。
千さんや先輩がよく行くというスーパーがお勧めだと言われたとかで、タクシーで三月くんと行く。
三月くんが“ナギもいるけど、オレんちで食う？”と言ってくれたからだ。
ナギくんが良いなら、断る理由もないけど、いいんだろうか。
･･･「･･･ワタシ、お邪魔ではないですか？」
「邪魔じゃねえから！」
スマホに向かって、焦ったように言う三月くんを見て苦笑した。
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作者名：miz | 作成日時：2020年11月19日 8時
