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店に入ったのに何も頼まないのも悪いと思って、カクテルを頼んだ。
身分証明書の提示を･･･と案の定言われて見せると、謝られて、いつもなのでと笑う。
お詫びにと、アレルギーないか聞かれてないことを伝えると、ミックスナッツをサービスしてくれた。
美味しい。
塩が良い感じ。
そういや夕飯まだ食べてなかったわ。
どうしよう。
どれ位で来るんかな。
･･･出待ちの子たち、誰目的かわからんけど、捕まったら遅くなるかな。
ううん。食べんのはやめよう。
早いかも知れんし。
カクテルもたまには美味しい。
ビールばっかだから、これだとジュースに近いけど。
のんびりナッツを食べて、カクテルを飲む。
１人だと寂しい人みたいで居心地悪いな。
スマホで小説を読んでいると、カウンターに手をついて話しかけてくる人がいた。
「１人？」
チラッと目線だけ上に向けて顔を見ると知らない人。
うーん。
相手しない方がいいよね。
『人と待ち合わせしているので、お構いなく。』
ツーンとして言う。
「じゃあ来るまで一緒に飲もうよ。」
そう言いながら隣の椅子に座られた。
『知らない人と飲む趣味はありませんので。』
座ってた所から１つ隣の席に移動する。
自己紹介までされて、知らない人じゃなくなったとか言われる。
なんやねん、その小学生みたいな言い訳。
三月くん(多分)が来るまでに追い払いたい。
もう何も答えるもんか。
でもしつこい。
ナッツもなくなってカクテルだけになったけど、もういっそのこと外で待つか。
そこまで多分寒くないし。
いや、夜だから危ないとか？
ううん。近所に他のお店とかもあるし、出ちゃおう！
『すみません、お会計･･･』
イライラしながら言うと、バンと一本の腕が私とナンパ男の間を隔てる。
「待ったか？悪いな。」
ホッとして肩の力が抜ける。
一瞬でイライラがどこかへ行く。
『ううん。大丈夫！』
自然と緩んだ私の顔に、優しくほほえみ返してくれたのは、予想通り変装した三月くんだった。
「オレの連れの、退屈しのぎに付き合ってくれてありがとうございました。」
ナンパ男に笑顔で言って私の方を見る。
ご飯食べた？とか、帰る前にどこかで食ってく？と言う三月くん。
取りあえず出ようと返すと、ナンパ男がクククと笑い出した。
「待ち合わせってどんな奴かと思えば、こんなガキかよ。お子様は寝る時間じゃねえの？」
ムッとして言い返そうとすると、三月くんは、放っとこうと言って私の腕を取った。
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作者名：miz | 作成日時：2020年11月19日 8時
