170 〜三月side〜 ページ20
「近いうちに聞きに来ると思ってましたよ。志貴さんとの事ですよね。」
直登はオレの顔を見るなりそう言った。
雑談から始めようと思ってたんだけどな。
でもRe:valeの楽屋に行かなきゃならねえし、仕事もあるから、助かるっちゃ助かる。
「じゃあ単刀直入に聞くぞ。･･･直登はAの生き別れの兄貴なのか？」
椅子に座りながら直登の方を向くと、直登は神妙な表情で頷いた。
「志貴さんには、俺に生き別れの妹がいるの話してたし、名前もAって知ってた。小鳥遊事務所で初めて会って、親父が会いたがってるの知ってるんだから話したか？って聞かれて、話さないって答えたら喧嘩になったんすよ。」
“俺の言葉を信用すると思いますか？”
“するだろう。嬢ちゃんの事なんだから。”
“ただでさえいつも適当だって思われてんのに？それに妹と住んでるおばあさんとやらも、極度のテレビ嫌いだし、鼻で笑われて終わりなんじゃないですか？”
そう言うと、志貴さんが言った。
“嬢ちゃんに会ったんだから、会わせてやれるのは実際直登しかいないだろ？父親の望みを叶えてやれよ”
そこで片親だけ血がつながってる兄貴の話をした。
“妹は･･･俺の妹は･･･兄貴と繋がってんだ･･･”
“兄貴の様子が変だったから、一回後をつけた。したら街中で一緒に歩いてて、Aって呼んでんの聞こえて･･･兄貴に直接聞いた。親父がずっと会いたがってたAだって。･･･でも、今は会わせられないって言われた。･･･元カレが、Aの周りの男に厳しくて何するかわかんないし、Aのこと探し回ってる可能性が高いから、不用心に会わせるわけにいかないって。言ったら親父も心配するから２人の秘密にした。解決したら会って貰おうって話し合った。･･･まさか、俺が先に会うとは思ってなかった。”
“親父は、会いたいけど、ばあさんに嫌われてるから会えないって。誤解を解かないのは、やったことは消えないって。母親を傷つけた事は変わんねえって兄貴に言ったんだってさ･･･俺には、適当してないでちゃんとやれとか言うくせに”
志貴との会話と、時系列順に直登の父親や兄の話をしてくれる。
ひたすら頷きながら聞いていた。
直登はいい加減そうに振る舞うこともあるけど、根は真面目で優しい奴だっていうのは知ってる。
今もこんなに考えて苦しんでんのに。
「なあ、Aと繋がってる兄貴って、Aの今の職場の奴？」
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作者名：miz | 作成日時：2020年11月19日 8時
