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「仏心出しちゃって。」
『長く一緒にいた人やし、嫌いにはなれませんよ。』
外に出て、さっきと打って変わって気の抜けた表情の店長に言い返す。
『でもありがとうございました。』
「いや？礼は、中にいる人に言ってやって。」
店長が、先輩のお母さんの車の窓をコンコンと指でノックした。
ウィーンと窓が開く。
『え･･･っ』
「はは、よう。」
苦笑いして身を乗り出してる三月くん。
『み･･･っ』
慌てて口に手をやる。
奥に人もいるけど顔は暗くて見えない。
『な、ななな･･･』
何でおるの！
もう何がどうなってんのか分からへん！！
テンパってると、前の席の窓も開く。
先輩のお母さんが顔を出した。
「取りあえずお話しましょう。私の家でいいですか？」
「話す事なんて･･･」
おばあちゃんが店長を見る。
『助けてくれたんやし行こう。』
おばあちゃんの腕をガシッと掴んで、車に乗せて貰った。
「･･･ちは･･･」
車中にいたもう１人を見ると私も挨拶して座った後で、助手席に乗った店長に目をやる。
甲斐直登さん。
店長と兄弟かな。
いや、だからって何で居んねん。
先輩の実家に着く頃には気持ちが少しは落ち着いてきた。
家にお邪魔すると、ゆっくり話してて良いからと、先輩のお母さんが人数分のお茶を入れてくれる。
先輩のお母さんだけがキッチンの椅子に座って、おばあちゃんも甲斐さんも店長も三月くんも私も、ソファに座った。
･･･変なの。
『どんな関係？』
コソッと三月くんに聞くと、三月くんはポリポリ頬をかいて苦笑いした。
「いやぁ･･･何から話せばいいんだろうな。とりあえず自己紹介ですよね！そっちから、甲斐直登、甲斐
「･･･誰？」
おばあちゃんが訝しげに三月くんを見た後で私を見た。
「もう一度言いましょうか！そっちから、直登、店長、そしてオレが和泉･･･」
『はしょった！しかも自分だけフルネーム！？』
「最後まで言わせろよ！？」
笑いながら三月くんと言うも、クスクス笑ったのはおばさんだけ。
気まずい。
かと思えば、おばあちゃんが穏やかな表情になって口を開いた。
「Aの祖母です。･･･ほとんど初めましてやね。」
「俺はさっき自己紹介しましたけど、そちらの和泉三月さんは、□さんのご友人です。直登は和泉さんと同じ事務所にいます。」
店長の説明におばあちゃんが目を見開く。
それでも落ち着いてるようだった。
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作者名：miz | 作成日時：2020年11月19日 8時
