【アイナナ】この道の先に。 2 (ページ38)

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「そうだね。心配してくれてありがとう。でも大丈夫だよ。何かあっても、俺たちは負けたりしないから。」

十さんの力強い言葉に息をのむ。

【十さんも･･･強い何かがあるんだ･･･】

思えば、ここ最近出会った先輩の友達は、みんな強い芯がありそう。

三月くんも十さんも先輩も、揺るがない何かがあるのを知った。
そのモノが何かまでは分からないけど。

「そうだ。この前はチョコレートありがとう。美味しかったよ。」
『本当ですか？良かったです。』

「それで聞きたかったんだけど･･･」
『はい？』

「“あれから”□ちゃんに話した？解決した？･･･この前会った時に聞こうと思ったんだけど、みんないたから聞くわけにもいかなくて･･･。」

十さんを見上げると、少し心配そうな顔に見えた。
心配かけてしまったことに申し訳なさが込みあがってきて、心配させまいと笑顔で答える。

『はい。先輩には話しました。解決に向かえればと思って、今日も少しの間話させてもらう予定なんです。』

「良かった。少し気になってたんだ。」

十さんもホッとしたように胸に手を当てて笑顔になってくれた。

『ありがとうございます。･･･あんな少しの間の事なのに、気にしてくれるなんて･･･優しいですね。』

「あはは、そうかな？ただ事じゃないと肌で感じたから。」

『十さんの助言があったから、バイトの帰りはいつも駅まで誰かと帰るようにしてるんです。行きもバイトの子と待ち合わせして。』

十さんは、もう一度、良かったと言って笑顔を向けてくれた。

十さんが、ここだよと止まってからその建物を見た。

【ここ･･･？･･･ここだと、あっちに行くと･･･】

道の先の、ここからでは到底見えない場所を想像する。

『近い･･･』

思わずポツリと呟いていた。

「え？」
『あ、いや･･･！意外って言ったんです。』

慌てて両手を振った。

『何だか事務所って名の付く所って、ビルの中にあるイメージだったので。私がバイトしてるビルにも何店舗か事務所があるから･･･』
「ああ、俺も前にいた事務所は大きいビルだったよ。色んな所があるよね。」

ん？

『今、事務所違うんですか？』
「そう。昨年大手事務所から独立したんだ。･･･じゃあ中にどうぞ。」

十さんがドアを開けてくれる。

この道をずっと先に行くと、先輩のマンションがある事にさっき気づいてしまった。
思ったよりも近い。

そのことに一抹の不安を抱えながら中に入った。