【アイナナ】この道の先に。 2 (ページ30)

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帰り際に、十さんと八乙女さんにチョコを渡して、天くんの分もお願いした。
二階堂さんには、三月くん以外の人の分もお願いする。

「･･･一個足りねえけど？」

『あ、えと･･･三月くんの分は入ってないから。』
「･･････。ふ～ん？」
「わーヤマさん悪い顔。」
「元々この顔ですがー？」
「ニヤニヤしてるよ。」

二階堂さんと先輩が話して、三月くんの話題から少し逸れてホッとしてると、百さんが近づいてくる。

「三月に近いうち会うの？」

･･･百さんもニヤニヤして･･･。

『えーと。ノーコメントで。』
「お、業界人っぽい返し！」
『業界人ではないですが。』

言って笑った。

・

バレンタイン。
夜9時15分。
約束の居酒屋。個室。

案内されても、三月くんはまだ来ていなかった。

チラッと持ってきたチョコ入った袋に視線をやる。

チョコをこんな人数分作ったのは初めてだった。
作ったこと自体が何年ぶりか過ぎて、人数分とかいう問題でもないけど。

今日、店長に渡す時、マジマジとチョコを眺められて

“買ってきたのを詰めたの？”

違いますと怒れば、次には

“これ、食べれるの？胃薬用意してくる。”

すんませんね。お菓子作るの下手で。
料理も得意じゃないからなあ。

思い出してると、個室のふすまが開いた。

「ごめん。遅くなった。」
『え？約束より前だよ。』

チラッとスマホの時計を見て答えると、三月くんは席に着きながら、また待たせたからと笑った。

気にしなくてもいいのにな。
･･･でも確かに、逆の立場なら気にするか。

取りあえず飲み物を注文して食べ物も決める。
落ち着くと、昨日二階堂さんに聞いたんだけど、と前置きした。

『ナギくんと２人で暮らしてるんだって？』
「ああ！そう。もーあいつ、狭いっつって言って、部屋が･･･あ、それぞれの部屋は別であんだけど、寮の時より物が増えてるんだよ。」

『え？何か買ったの？』

引っ越しで広くなったなら、新しく買うのは理解できるけど。
いや、私も色々細々と買ってて部屋が綺麗にならないのが問題だから、人のこと言えんけど。

けど三月くんは首を振った。

「いや、何も。寮の時にも、陸や壮五の部屋にナギのもん置いてたからさ、そのまんま持ってったから大変なんだよ。」

『え？一緒に使う物？』
「違う。完全なるナギの私物。」

すごいな。
片付け下手な私でも、そんなことしないけど。
つか、その発想ないわ。

呆気にとられていると、飲み物と食事が運ばれてきた。