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『千さんは？』
「百とレコーディング。私は昨日、音取り終わったから。」
よくわかんないけど、仕事なのかな？
「勝手に使って良いよって言ってくれてるし、仕事終わったら帰ってくるから、ちゃっちゃとしちゃおうね。」
先輩が言いながら部屋の電気をつけた。
【･･･広い。】
大きなテレビに大きなソファ。
観葉植物･･･。
･･･あれ？どっかで見たような？
いや、初めて来た人様の家なのに、見覚えあるって変。
ジーッと観葉植物を見てると、先輩が私の顔の前で手を振った。
「どうしたの？」
『んー･･･なんかで見た事あるなって思ってるんだけど･･･そんな訳ないよね･･･』
苦笑いしながら持ってきた荷物を置いて、手を洗う。
先輩が持ってきた材料を袋から出していると、調理器具を出しながら先輩が口を開いた。
･･･ってか、人の家なのに、よくある場所把握出来てんな。
そういや先輩の家にも千さんの衣装ケースあったし、相当行き来してんのかな？
「Aって、RabbiTubeとかアニメとかスマホで見る？」
『ほとんど見ない。相当気になるのだったら見るけど、RabbiTubeで流れる１話無料とかだけかな。』
「じゃあこの前、好きって言ってた“Re-raise”のMVは見た？」
先輩の質問に、見た見たと頷く。
『ヤスさんの時のだよね。凄い良かった。最初に“星屑マジック”の･･･』
ん？？
最後もプレーヤーが映ってたな。
先輩と目が合う。
すぐに観葉植物の棚を見た。
『え？ここで撮ったの？』
「うん。」
『最後の所？』
「そう。」
先輩の笑顔は張り付いたまま動かない。
『えええええ！？』
瞬間に私は叫んでた。
『え！？家とか使わへんよね！？』
「うん、まあ普通はスタジオだね。」
『凄い！そんなとこに、おるの！私！』
「聖地巡礼でしょ？」
『ファンやったら卒倒すんで！？』
わたしが、はわわわって震えてる間も、先輩は淡々とした口調で笑顔で答えてくれる。
ふと先輩の目が、いつもより優しく懐かしそうに細められたのに気づいた。
『･･･先輩？どうしたん？』
「ん？」
『ここで何かあったん？』
先輩は驚いたような表情で止まった後、微笑んだ。
「ううん。私もそんな反応だったんだろうなって思っただけ。･･･さ、作ろう。」
あ、そっか。
先輩はMV見てから、千さんの所使われてる！って知ったんやもんね。
似たような感動はあるんだろうな。
そう思いながら、先輩とキッチンに立った。
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作者名：miz | 作成日時：2020年6月5日 0時
