69 ページ19
『･･･私、今一人暮らししてるけど、一人暮らしって初めてなんだ。･･･三月くんは一人暮らししたことある？』
三月くんは、急に何言ってるんだろ？みたいに思ってるのか、キョトンとしながらも首を横に振った。
『じゃあ寮に帰っても誰もいないのは余計に寂しいよね。･･･私、一人暮らしするようになって、一人ってこんなに寂しいんだって思った。仕事の帰りとか、誰かとの楽しいお喋りの後、帰ってからとか。･･･想像以上に静かなんだよね。めっちゃ喋りたくなる。』
「･･･そうだなー。･･･はは、今まさにそんな感じ。みんな１人暮らしするわけじゃねえんだけど、今こんだけ大勢で住んでて、気づけば、遅刻するって言いながらバタバタする環とか、それを起こしに行って忘れもんないかって言う壮五の声とか。」
三月くんは、最初寂しそうな表情をしてたけど、次第に優しそうで柔らかい笑顔になっていく。
「･･･しょっちゅうビール飲んでる大和さんも、アニメばっか見てるナギも、年中仲良く言い合いしてる陸も一織も･･･。そういう日常が変わっていくのは･･･」
また寂しそうな表情。
三月くんはそこで口を閉ざした。
『･･･三月くんはみんなのことが大好きなんだね。』
「へっ？」
三月くんが俯いていた顔を上げた。
ちょっと顔が赤い。
･･･笑顔でいてほしい。
私は、夢を語ってキラキラしてて、笑顔な三月くんでいてほしいと思うから。
『大丈夫だよ。何を知ってるって訳じゃないから言えるのかも知れないけど、三月くんがみんなのことが大好きなら。みんなもお互いに好きじゃなきゃ、他人が一緒になんて住めないよ。寂しいなら私を呼べばいい。一緒にいるよ。』
三月くんはポカーンと口を開けて私を見ている。
かと思えば急に焦ったように言った。
「え？一緒にいる･･･って･･･」
『可能だと思うけど。正社員じゃないから融通聞くし。迷惑にならない程度に付き合うよ？』
「あー･･･そうだな･･･」
今度はひきつってる。
なんか表情筋忙しいな。
でも･･･落ち込んでるよりずっといい。
『休みの日、寂しいなら、みんなにも会いに行けば良いんだよ。仕事の邪魔にならないようにメンバーの仕事見てるとか。まあ体を休ませるのも必要だけど、心に潤いも必要でしょ？』
「ああ！そっか。そうだな。」
三月くんの表情が、パッと笑顔になる。
「ありがとな！A！」
【！！】
一瞬、ドキッとした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 179人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：miz | 作成日時：2020年6月5日 0時
