【アイナナ】この道の先に。 (ページ6)

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「君、どこかの事務所に所属してる？」

なんだ、スカウトか。

『あ、すみません。興味ないんで。』
「ええ！？美人なのに。売れるよ！」
『すみません。興味ないんで。身長も低いですからモデルも無理だし。』

二度目の断りを入れて自転車に跨がると、前に立たれてカゴを掴まれた。

【なんや、この人。】

ムッとして口を開く。

『離してください。困ります。』
「その大阪弁もギャップがあっていいね～」
『あんたに関係ないやろ。退いてください。』

自転車から降りて怒るも、向こうも手を離さない。
こういう事は多々あるから慣れてるけど、この人はしつこい。

「ちょっと話だけでも～」
『あんな、しつこ･･･』
「あ、ツクモプロの！ここで会うなんて偶然ですね！」

「『え？』」

薄いオレンジ色の頭にマスクをしている人が、しつこい人に話しかけた。

誰？
よくわかんないけど、しつこい人の知り合いっぽい。
しつこい人は自転車のカゴから手を離して、オレンジ頭の人と笑顔で話してる。

ちょうどいいから逃げようか。
でも、なんかこのまま逃げていいんかな。

迷ってると、オレンジ頭の人が背中に手をやって、ちょいちょいと“あっち行って”みたいな事をしてるのに気づいた。

慌てて自転車に乗って、近くの角を曲がる。

「あ･･･っちょっと待っ･･･っ」

あの人、助けてくれたんや。
知り合いやったのは偶然かも知れんけど。

自転車から降りて、来た道を折り返す。

【お礼だけでも言いたい。】

角から、そろっとさっきの場所を見ると、しつこい人もオレンジ頭の人もいなかった。
ちょっとガックリして、どっかの店で食べる気も失せて、駅の駐輪場に自転車預けて、コンビニで適当に買ってから、先輩の部屋までの道を歩いた。

マスクしてたから顔はそんな分からなかったけど、私より身長高かったな。
いや、私より高い人なんて、ごろごろいる。

ていうか、スカウトの人と知り合いだったし、そういう業界の人かな。
縁ないな。

ああいう人も世の中にいるんか。
薄いオレンジ色の髪、綺麗やったな。

そうそう。
ちょうど前を歩いてるような･･･

･･･ん？

オレンジ色の頭って、そうそう見たことないけど。
でも人違いやったら恥ずかしすぎる。

いや、間違えましたでええか。

ええい！
女は度胸！
誰が言ってたのか知らんけど！

『すみません。』

駆け寄って声をかける。
オレンジ頭の人は、ピタッと止まって･･･。

そのまま走り出した。

【なんで！？】