【アイナナ】この道の先に。 (ページ42)

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42　（私の過去）ページ42

先輩は私を見て寂しげに口角をあげた。

「執拗に追いかけられるって、怖いよね。自分が好意を持ってても持ってなくても。」

【！！】

ゆっくり自分の目線が下にいく。
ギュッと膝にある手を握りしめた。

『･･･先輩。たっくんから、なんか連絡あった？』

知ってる。
連絡あったんだって事位。

私が、元彼の話をしようとしてるのに気づいたから、先輩は私が話しやすいようにと“身を隠した方がいい経験をしてる”という話をしてくれたんだ。

･･･私も、そうしてるから。

「･･･うん。あったよ。」

顔をあげると、先輩は優しい目で私を見てくれていた。

・

お母さんとおじいちゃんが亡くなって引っ越しした学校で、初めて声をかけてくれたのは、たっくんだった。
先輩は近所だから、おばあちゃんと２人暮らしなのを気にして、一緒に家で遊んでくれたり、一緒に学校に行ってくれて、でも、学校は慣れたら１人で行ってと言っていた。

だから、色んなことが重なってて塞ぎがちな心を解してくれたのは、たっくんと先輩だった。

たっくんも先輩も明るくて優しい。
当然２人共モテると思ってた。

学校で見る先輩は、いつも１人だった。
だからと言って、いじめられてるのを目撃するわけではなく。

たっくんは、想像通りクラスの人気者だった。

私に、たっくんに近づくなと言った友達がいた。
近づいたら、ハブるよって言って。

私に、先輩に近寄らない方が良いよって言った友達がいた。
好かれてないから、近寄るとハブられるよって。

意味が分からなかった。

２人とも好きなのに、仲良くしちゃいけないの？

小学4年生の私には、ショックすぎて、頭が働かなかった。

結果、2人より友達を選んで、離れようとした。

先輩には、学校は１人で行けるからと言って距離を置いた。
先輩は笑って頷くだけで何も言わなかった。

たっくんには、声をかけられても、忙しいからとか、トイレ行くからと避けるようになった。
たっくんは･･･

私を諦めなかった。

先輩の学年である6年生の卒業式が迫ったある日、下校の時に、いつものように、たっくんは私を追いかけてきた。

逃げるしかないと思った時、たっくんが言った。

“Aさんが好きなんだよ！彼女になって欲しいくらいに！友達位には戻させてよ！”

驚いて思わず足を止めて振り返る。
たっくんは、つらそうな、今にも泣きそうな顔をしていた。

“嫌いなら嫌いって言って。”

嫌いな訳ない。
傍にいてくれた人だったから。