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「んー・・・でも、眼鏡と髪型違うだけでも結構バレないよ。これからこの髪型で外に出ればバレるようになるかなー・・・」
先輩がそう言いながら髪を耳にかけると、三角形をモチーフにしたイヤリングが顔を出した。
なんか先輩、一気に大人っぽくなって、色気あるっていうか・・・
『小中の時だってもう少し長かったのに、そんなに短いなんて初めて見た・・・』
「うん。初めてした。」
飲み物が来て乾杯。
何から話せばいいだろう。
今の状況?それとも・・・
迷っていると、先輩が言った。
「私ね、マスコミとかファンとかに追いかけられる訳にはいかなかったんだ。」
『え?・・・まあ、芸能人だし、そんなもんちゃうの?』
「それだけじゃないよ。過去を探られたり、住んでる場所を大体でも特定されたり・・・黙ってなきゃいけないこととか、守らなきゃいけない人とか立場とか、事務所とか。そういうもののため、っていうのは聞こえは良いけど、ずるいか・・・。自分がそうしたかった、ってのが正解かも。」
よく分かんないけど、やっぱり、そういうもんちゃうの?
「世間ではもうバレちゃってるから言うけど、私、元々Re:valeなんだよ。・・・千と万・・・万って、大神万理ね?あの2人がやってた時に、エレクトーンとして仲間になってって言われて、すぐなった。でも事故があって・・・」
大神さんは、千さんと先輩を守るために姿を消して、生気をなくした千さんを説得してデビューに導いたのは百さんらしい。
『先輩は・・・弾けなくなったん?』
「完治までは1年だって言われた。」
大神さんと再会しても、百さんと千さんには言えなかったり・・・って言って、先輩は寂しそうに笑った。
“□を戻すために全部、百さんや千さん、岡崎事務所の人たちが考えてやってんだよ。”
三月くんの言葉を思い出す。
『・・・だから“戻す”・・・』
「ん?誰かから聞いた?」
『あ、三月くんから。でも、先輩に聞いてって。』
「へー。ずいぶん仲良くなったね。」
『そういうんちゃうから。』
ニヤニヤする先輩を軽く睨むと、食事が運ばれてくる。
店員が扉を閉めて出て行くと、先輩はまた口を開いた。
「万と一緒の所は絶対に撮られちゃいけない。他には百と“仲がいい”所も撮られちゃいけない。噂だけなら信憑性も薄いでしょ?・・・特に、百や千は、言い寄ってくる女の人も半端じゃないから、結構な頻度でマスコミに追いかけられてたから、それだけはずっと気にしてた。」
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作者名:miz | 作成日時:2020年4月15日 21時