【アイナナ】この道の先に。 (ページ15)

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「なんだ。千と百が昔住んでたアパートじゃん。」

先輩が覗き込みながら言って、ひょいと紙を私の手から取った。

「だから一緒に行くって聞かなかったのか。言えばいいのに。もー･･･」

先輩嬉しそう。

『□先輩って、千さんに冷たいのに、好きなんだね。』
「え！？･･･まあ、大事ではあるけど･･･」

わ、照れてる。
ツンデレか。

紙を覗き込んだ。
しかし安いな。家賃。
お得意様価格とか、そういうんちゃうよね？

『これ、正規の家賃かな？』

「んー･･･２人が住んでた部屋じゃないけど、２人の時の家賃より少し高いし正規かも。大家さんの電話番号が書いてるから、仲介業者はいなさそうだね。」

もう1枚の物件もアパート。
新しめの物件だからか、ちょっと高め。
こっちの方が、ここから近い。

どっちでも金銭的には大丈夫そう。
私が行ってる不動産屋には出回らないやつなのか。

というか、この位の金額がいいってよく分かったな、百さんと千さん。

『･･･先輩、私の事、どんな風に言ってたの。』

お風呂上がってから聞く。

「テレビを一切観ない、関西出身の美人親友。元彼に家具全部あげて職を変えて、家なし。」

まんまだな。

『いや、美人じゃないし。』
「美人だってば。ツクモが捜してるらしいし。Aのこと。」
『ツクモ？』

「みっちゃんに庇われたんでしょ？スカウトされて。みっちゃんも、知り合いじゃなくて困ってるように見えたからって、その人に言ったみたいだけど。まあ、現社長が興味持ってるわけじゃないからマシだけどね･･･」

ああ、あの時のしつこい人。

先輩は、何かあったら言ってと笑って、寝室に入っていった。

【そう言えば、泊まる初日にクローゼットで見た、“ひゃく”と“せん”のラベル･･･百さんと千さんの事だったのか。】

もう１人のRe:valeの女の人は泊まりに来ないのか、それとも服とか貸してるのか。
男の人が泊まりに来るのは･･･彼氏がいるなら良いか。

そう思いながらソファベッドに横になった。

次の日バイトは休みで、取りあえず物件を見てみようと、２軒の大家さんと連絡を取ってから先輩の部屋を出た。

築年数が新しい方へ先に行く。
実はここの方がバイト先にも近い。

料理はあんまりしないから、キッチンは拘らない。
“節約するなら料理した方がいいよ？”という先輩の言葉が頭をよぎるも、材料買って作った残りの野菜とかをダメにする確率の方が高そう。
それならお弁当買う方がいい。