笑顔のキミが好き 【百】 26 （完結）

思い出巡り　2 ページ46

百は、ドライブと言いながら、私の実家の近くの思い出場所巡りをしてくれた。

千を初めて見た店。
万と千に初めて会ったライブハウス。
万と千と笑いあった海岸。

千を初めて見た店に着いて、なんの場所か分かるか聞かれた時は驚いた。
何で知ってるのって。

この場所を知ってるのは、お母さんしかいない。

車に乗って、都内に戻ると百が言うと、気になって聞いた。

『どうしてここに連れてきたの？』

「･･･Aの前世の記憶がなくなったら、連れてこようって決めてたんだ。オレの事、どう思ってるかわかんないけど、好きになってもらうって決めたって言ったじゃんか。」
『うん。』

「そのためには、思い出の場所巡りで、順に追っていけば、気持ちを思い出してくれるかなって。」

『私、百の事、ちゃんと好きだよ？』

「ありがと！オレもAがめっちゃ好き！」

顔は見えないけど、十分にお互いの気持ちが通じてる気がする。
そう思ってるの、私だけじゃないよね？

「Aがそう言ってくれるから、本当は巡んなくても良いかなって思ったんだけど、オレが見てみたくって。Aの思い出の場所。･･･付き合ってくれてあんがとね！」

『夜で良かったの？別に今日じゃなくても、時間さえあれば行けるのに。』
「思い立ったら即行動のモモちゃんだから！」

･･･まあ、フットワークは軽いよね。
記憶がなくなったらと思って、我慢してたのかな？
そうは見えないけど。

そうこうしてるうちに、高速も降りて、家に･･･と思いきや、家とは違う方向へ車は向かう。

【まだどっか行くの？】

というか、プレゼントいつ渡そう。
タイミングが中々ない。

『･･･あれ？･･･ここ･･･』

車がとまって、出る。

百はclosedの札に構うことなく、ドアを開けた。
開いてる事に驚くも、慌てて後を追う。

『いいの？もう閉まってるよ？』

「夜の11時から0時までは自由に使って良いって言ってくれたから、大丈夫。過ぎたら閉めるって。」

言いながら百は電気のスイッチをつけた。

暗い部屋にパッと明かりがついて、反射的に目を細める。
暗い外や部屋に慣れた目を、ゆっくり光に慣らさせると、懐かしい気持ちが込み上がってきた。

時計を見ると、23時半。
百がカウンターの前の椅子に座るから、私も隣に座った。

「懐かしいね。」
『うん。5年振り。』

カウンターから店内を見渡す。

色々な楽器や周辺機器がステージにある。

ここは、万たちとライブした場所だ。

クリスマスプレゼント→←思い出巡り　〜百side〜

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す