笑顔のキミが好き 【百】 26 （完結）

彼女に伝えたいこと　2　〜百side〜 ページ41

記憶があるなら、多分オレなら感動する。
自分のために、あの曲が生まれるって凄い！って浮かれる。

「A。･･･記憶、なくなったんだね？」

オレがそう口にすると、Aは目を見開いた後、伏せて、コクンと頷いた。

『･･･多分。』
「多分？」

『1冊目と2冊目に載ってる曲は全部世に出てるけど、今作ってる曲が、3冊目にないとは言えない。でも見たくない。』

封印したからだよね。

「じゃあ、大体でも、いつどういう事があるとかの未来は分かんない？」

『うん。そこは自信もってない。』

そっか･･･と言いながら、膝の上で、片手の拳をもう片方の手で握った。

「･･･Aは怖くない？記憶喪失みたいって不安になってない？」

Aの方は向けなかった。
それは、自分が怖いと思ってるから。

でも･･･

『自分の過去の行動が納得いかないことはあるよ。でも、記憶喪失とは違う。私は、1冊目と2冊目を読むことが出来る。･･･だから、想像出来る。こうしたかったんだって。それを忘れない限り、自分の行動の意味を知ることができるし、それとは別に･･･』

Aの手が、オレの手に重なる。
つられてAを見た。

『一緒に、みんなで過ごして、乗り越えてきた日々があるから･･･。･･･百の事が好きなのは、変わらないよ。』

「･･･っうん･･･」

優しい笑顔のAの言葉に、込み上がってくあたたかいもの。

気づいてくれてたんだ。
それが、物凄く嬉しい。

「オレ、Aの記憶がなくなってくの、寂しかった。Aの気持ちが、前世のもんだって可能性があるような気がして。･･･でも、違うんだ。」
『違う？』

「オレはAが好き。前世の記憶があってもなくても、それは変わんない。だから記憶がなくなって、もしAの気持ちが、オレに向かなくなっても、諦めないよって言えばいいって気づいた。一度好きになってくれたなら、その年月が、心や体に残ってるはずだろ？絶対もう一度好きになってもらうつもりだったんだ。」

『あはは。元カノになっちゃう。』
「別れないって言うつもりだった！」
『そうね。Re:vale脱退するから、別れても支障はないよね。』
「ちょっと！？別れないって言うつもりだったってば！」

Aが笑う。
冗談ってわかってるけど･･･と口を尖らすと、Aがオレの肩に頭を乗せた。

『記憶がなくなっても、好きって言ってくれて、ありがとう。』

その言葉が嬉しくて、そっと体を離して唇を重ねた。

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