笑顔のキミが好き 【百】 26 （完結）

ハッピーアワーの暗雲 ページ5

『おはよう。』
「おはよう！見て見て！チケットのデータ整理してくれてんだよ。」

事務所に行くと、百が事務所の人たちに向かって手を広げた。

『･･･ありがとうございます。わがまま言ってごめんなさい。』

「大丈夫ですよ！ファンを大事にされてるからこそですから！」
「お手伝いが出来るのが嬉しいです！」
「Aさんは、この後が大変なんですから、それに比べればなんでもないですよ！」

事務所の人たちには、ヤスが私だと伝えている。
みんな優しい。

『あはは。頑張るよ。私が言い出したことだから。』

条件2つ目。

ライブ会場に来てくれた身元がわかる人たちに、今までありがとうの意味でミニサイン色紙を送る事。
この案には、百も千も書いてくれると言ってくれた。

ファンクラブ会員の人たちには元々送ろうと言ったけど、ファンはそれだけじゃない。
会員じゃなくても来てくれる人はいる。

だからこその案だ。

何万もの色紙だから、何日にもかけて書く。
既にサインだけは大分書いている。
色紙に書く宛名も直筆で、後で入れる。

【百も千も忙しいのに･･･千は特に･･･】

条件3つ目は、年始になってからだ。

『今日オフだから、出来るだけ書いちゃうね！』
「オレも！Aとデートしたいけどさ、約束があんだよね。」

『はいはい。行ってらっしゃい。』

「ん？妬く？」
『妬かない。』

相手を百から聞いて知ってるのに、妬くわけがない。

「デートしたかったって言って〜。」
『はいはい。残念だったなー(棒)』
「愛がない！！」
『そこら辺にあるよ。』
「え！？愛は心の中でしょ！？」

前も似たようなのしたな。
スタッフ達は、夫婦漫才だとか言って笑ってる。
百も私も笑った。

ボブが、優しげな目で私たちを見ていたから、百がどうしたのか聞いた。

ボブはカタコトの日本語で、以前ノースメイアの要人のボディーガードをしていた時の話を聞かせてくれた。

【あれだな。ええと･･･名前忘れた･･･。ナギのお兄さん。】

なんて名前だっけ？
喉まで出かかってるんだけど･･･

『あ！セトさん！』

「「は？」」
「OH･･･」

悩んでる時に、いつの間にか来ていた千と、百とボブが、目を丸くして私を見た。

【げ･･･！】

『いや、何でもない！色紙書こうかなー？』

百のジト目から逃げるように、テーブルの紙袋の中にある色紙とペンを手に取った時、千のスマホが鳴る。
スマホを見てから千が聞いてきた。

「どんな王子様だって？」

ハッピーアワーの暗雲　2→←最後のライブ後

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す