笑顔のキミが好き 【百】 26 （完結）

説得漫才 ページ14

楽屋で、じーっと百と千を見ていた。
例のプロデューサーの説得が上手くいかない千のために、百がプロデューサー役をしてるのに･･･

「僕のお願いを聞いてくれないか。」
「聞いちゃう〜！ユキ、イケメン！」
「モモ･･･」
「ユキ･･･」
『バカにしてんの？』

ぎゅーっと抱きしめ合いだした百と千に、冷ややかな視線を送ると、百が嬉しそうな顔をした。

「ヤキモチ！かっわいー！」
『もう一度言おうか。バカにしてんの？』
「怒った顔もキュートだけど、笑った顔の方がモモちゃん大好き！」

百が取り合ってくれないので、放っておいて、千に目をやった。
すう･･･と目を閉じてから深呼吸。
目を開けると、冷たく言い放つ。

『千くん。この前の話は断ったよね。話すことはない。帰って。』

百が、うわー声が変わったー！って言ってるけど。

「A。」
『ヤス。』

「･･･ヤス。僕の目を見て。どうか僕を信用して。」

百にやったのと変わらないけど。

思わず呆れた目をやると、おかりんが入ってきた。

「失礼します。あれ？何してるんですか？」

「「説得の練習。」」
『演技。』

「成功のほどは？」

「説得されちゃった！」
『私が呆れて、終わった。』

千「え？呆れてたの？信用しそうだったんじゃなくて？」
『誰でも百みたいに軽く説得されないよ。』
「待って！？それ、オレがチョロいみたいに聞こえんじゃん！」
『千限定。間違ってる？』

キョトンとして聞くと、百は一拍置いてから、間違ってる！と言った。

「Aとバンさんなら説得されちゃう！」

･･･それ、結局、チョロいんじゃないの？

とにかく、と、おかりんが眼鏡のフチを持ちあげながら口を開いた。

「ヤスさんは厳しそうで良いですけど、百くんは簡単に落とされないで。千くんは顔面とボディランゲージに頼ったんじゃないんですか？」
『その通り。』
「じゃあ、次はボブで練習するよ。」
『ボブは日本語あんまり分からないから、私を落とせてからじゃない？』
「ちょっと！？ヤスが落とされちゃったら、そんなの浮気じゃん！！だめ！！」

「･･･僕、Aを落とせた試しがないのに･･･」

百が私を横から抱きしめて、“ユキには、やんない！”って膨れてる。

『落とされないから大丈夫だよ。』
千「それ、練習にならない･･･」

「落とせない前提の練習もどうかと思いますけど、落とせる前提の練習もおかしいですからね！？」

･･･だよね。

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