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90 〜万side〜 ページ10

タクシーで一言も口をきかなかった。
というより、運転手さんに会話聞かれたら困るしな。

「泊まって良いよね?」

一緒に降りてから言って、半ば強引にAの家に入る。
Aは何も言わなかった。

怒ってはいないんだけど。
怒ってるようにみえるのかも。

実際、渦巻いてる。
どこ触ったんだと、モヤモヤしてる。

間違いなく俺より先に。
壮五くんが。

心のトゲを抜きたい気持ちで、深呼吸のつもりで息を吐くと、Aがビクッとした。

「・・・・・・ごめん。怒ってるわけじゃないんだけど。」

怖がらせて申し訳ない気持ちになって謝ると、Aはホッとしたように肩を落とした。

「眠いよな。お酒飲んだし、そのまま着替えてから寝よう。」
『・・・でも・・・』
「話は明日。・・・1日、一緒にいられる?」

安心させられるように、頭に手を置いて少しかがんで微笑む。

『あ、私はいれるけど、万が忙しいかも・・・』

「ん?・・・・・・記憶?」

聞くと、Aは頷いた。

「気にするな。起こらないかもしれないんだし。明日話しよう。“俺は何の予定もないよ。”」

そう言って笑う。

伝わって欲しい。
未来がどうなるから、これを止めるだとか、こうするべきとかいう気持ちを持たないようにして欲しい。

前よりは、そういうのが減ったけど、時々気にしてるから。

『・・・うん。ありがとう。』

Aが笑う。
俺も笑って、一緒に歯を磨いてから寝た。


朝、眠いのにいつも通りに起きて、横に眠るAの頭を撫でてから寝室を出た。

【そういえば、車取りに行かないとな・・・飲んじゃったからタクシーで来たし。】

予定ないと言ってしまったけど、お酒が抜けたらAと行くか、と思いながら日の光を入れようとリビングのカーテンを開けて下を向いてギョッとした。

寮の周りに人だかり。
驚いて、Aの双眼鏡があったはずと思って取ってくる。

女の子ばかりだ。

あれではIDOLiSH7の子たちが外に出ようものなら騒ぎになる。

誰なら起きてるだろうと思案して、三月くんに電話した。

・・・「はい・・・。三月です・・・。」

眠そうな声。
起こしちゃったか。

「大神です。」

起こしてごめんねと謝った。

「三月くんなら、起きてるかなと思って。窓の外、見てくれる?」

三月くんはものすごく驚いたようで、みんなに外に出ないように言っておく。
俺はお酒クサいと思うから、お酒が抜けたら注意しにいく事を伝えて電話を切った。

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作者名:miz | 作成日時:2019年12月2日 8時

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