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131 (消えた記憶) 〜万side〜 ページ50

『出来ないという事っていうより、どっか抜けてるんだよね万は。・・・そこが良いとこだと思うけどね。』

あ。
デレた。

「ふーん?」

俺の頬が自然と緩むと、Aは口を尖らせて睨んでくる。

『ニヤニヤしてる。』
「してないよ。」
『してる。』
「してないって。嬉しいだけだから。そういう所が好きって言ってくれるから。」
『好きなんて言ってない。』
「同じ事だろ?」
『違う。』

「・・・顔赤いけど?」

笑いをこらえるように言うと、Aが黙る。
こういう掛け合いは楽しいんだけどな。

「俺は、Aの、そうやって素直じゃないところも分かりやすいところも好きだよ。」

そう言って笑うと、Aはますます真っ赤になった。

食事後、俺が片付けをしてると、Aがキッチンに来た。

『まだ食べれる?』
「ん?ケーキ?」
『時間なかったから、小さいレアチーズケーキにしたけど。』
「ああ、食べれるよ。」

小さなセルクル型に、ビスケット生地の土台の上に2種のレアチーズケーキ。
上にジャムを乗せてる。

一緒に食べていると、Aがラッピングされた手の平にちゃんと乗るサイズの長方形の箱をくれた。

プレゼントだ。
本当に想像通り。

こういう所も可愛いな。

「Aが作ってくれた料理だけで充分だよ。」

『私が納得してなくて、プレゼント買うの想像ついてたでしょ。』

お互いに分かってたのか。

ふっと笑みが零れて、手を伸ばして受け取った。

「ありがとう。・・・開けて良い?」

Aが頷いて、ケーキを食べる手を止める。

すごい真剣。
珍しい。

俺の反応をいつも以上に気にしてる。

【そこまでの物?】

不思議に思いながらもラッピングを外す。

箱を開けると、革製品のキーケースが入っていた。

・・・普通。

あ。

「まさか、GPS入ってたりとか!?」
『しないよ!?何、GPSって・・・・・・あ・・・TRIGGERの時の事言ってんの!?もうしないよ!記憶ないもん!』

「え?記憶ないの?全部?」

驚いてAを見ると、Aがコクンと頷いた。

「聞いてないけど。」
『言ってなかったっけ・・・ごめん・・・』

「千や百くんには言った?」

千が作曲した新曲を聴いて弾いた時、全く思い出しもしなかった事で確認できたとAが言う。

「・・・良かった・・・」
『え?』

「もう苦しんだりしないで良いんだな。・・・良かった。」

言葉がスルリと口から零れた。

Aは目を見開いたけど、すぐに優しく微笑んでくれた。

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作者名:miz | 作成日時:2019年12月2日 8時

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