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109 〜万side〜 ページ28

仕事の行き先を聞いて、Aに後部座席に座ってもらう。
すぐに発進した。

お互い何も言わない。
というか、バックミラーに、怒ってる顔のAが映る。

「えーと・・・今日、仕事終わるの早い?」
『知らない。』

「終わる予定時間は?」
『夜7時。』

ちゃんと答えてくれることにホッとした。

「じゃあ、Aの家で待ってて良い?合鍵欲しいな。」
『いらないからポストに入れたんだよね。』
「う・・・」

かなり怒ってる。
こうなったら多分長い。

「じゃあ、俺の家に来れる?仲直り出来るチャンスが欲しい。」

・・・それとも信用出来ない?と聞こうと思ったけど、それを聞くのは、下手すれば、Aの道を塞ぐことになる。

俺が過去に、“信用出来ないなら別れる”って言ったのは、結構トラウマにさせたらしいから。

Aがそうしたいなら、俺に拒否権はないけど、本意じゃない。

「夕食作って待ってるから。」

でも、傷つけた分、出来る限りのことをしたい。

『・・・カプレーゼ食べたい。』

Aの好きなものだ。

「分かった。カルパッチョとバーニャカウダも作るよ。」

ホッとして、頬が緩んだ。

Aを送ってから事務所に戻ると、みんなとお寿司を食べた。
社長が、Re:valeの記事の話をしてくれていた。

ヤス引退の件は、気になるなら本人に聞いてと言ってたから、社長は知ってるんだろう。

今日はゆっくり休んでという社長の言葉に甘えるも、正直そこまで休むことは出来ない。
買い物に行ってから下ごしらえと、作っておけるものだけ作り終えて仮眠した。



スマホのアラームで起きる。
と思ったら、Aからの電話だった。

・・・『もしもし。今終わったから、行っていい?』

ボーッとした頭で考えることなく、いいよと言っていた。

・・・『・・・寝てた?今日やめる?』

心配そうな声。
一瞬で目が覚めた。

「えっ!?いや、来てくれる?」

・・・『でも、ノースメイアから帰ってきたばかりで疲れてるでしょ?寝たら?』

「Aと一緒にいれば疲れもとぶから。仲直りのチャンスくれる?」

・・・『万の気持ちはわかったから。疲れてるのに、無理される方が嫌だよ。』

Aの気遣いが心にしみる。
けど、違うんだよ。

俺が、自分を許せない。
Aへの誠意を見せたいし、何かしてあげたいっていう、自分勝手な気持ちからくるものなんだ。

「俺が会いたいって言っても?」

Aが電話の向こうで、息をのむのが分かった。

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作者名:miz | 作成日時:2019年12月2日 8時

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