108 〜万side〜 ページ27
頬に来ると思った衝撃が胸に来て、驚いて目を開けた。
『バカ!なんで勝手になんでも決めちゃうの!全部自分で背負って、勝手に悲劇のヒロインやるな!!』
俺の胸を叩いてくる。
力は弱い。
三「悲劇のヒロイン・・・」
「バンちゃん男・・・」
『自分のせいで皆に迷惑かけるとか思ってんじゃないでしょうね!?あんな報道位で影響するほど、IDOLiSH7はヤワなグループじゃない!万が一番わかってるでしょ!?』
陸「あんな報道・・・?」
『万の周りに、あの時の千のような人はいない。こんな事で万がいなくなったら、そっちの方が、私たちに精神的ダメージが来るの。あんな奴に負けるわけにいかないの。・・・それでも不安ならRe:valeが、あんた位守ってやるわよ!』
さすがに若干息を切らせたAが、俺を見上げて睨んでる。
【・・・参ったな・・・】
あの時は、ぐしゃぐしゃに泣いていたのに。
それでも、どこか冷静で、自分がやらなきゃいけない事をしっかり把握していた。
あの時は、年齢相応な部分と、俺よりも大人な部分とあったからだろうけど。
「・・・A・・・」
『嘘つき。』
「え。」
『ずっと傍にいるって言ったくせに。どんだけ愛してるか、分からせるって言って、めちゃくちゃ・・・っんーーっ!!』
とっさにAの口を手で塞いだ。
何てこと言い出すんだ。
未成年もいるどころか、社長がいるんだぞ。
“あの”社長が!
血の気が引いた顔で、みんなをそっと見ると、ポカンとしてる環くん、真っ赤な顔の陸くんと紡さんと壮五くんと三月くん。
呆れたような目をやる一織くんに、興味津々そうなナギくんと大和くん。そして・・・
笑顔なのに、怒ってそうに見える社長。
「万理くん。」
「はい・・・」
引きつりながらも返事すると、社長は怒る風でもないように言った。
「Aちゃんのこと、泣かせないんじゃなかったのかな?」
『泣いてない。』
「泣いてるのは心だよ。Aちゃんの言う様に、負けるわけにいかない。君がここにいるなら、僕らの勝ちなんだ。君の居場所はここにある。じゃなきゃ、百くんにも怒られる。・・・ところでAちゃん、お仕事の時間は大丈夫かな?」
『えっ!?あ!ヤバ!』
Aが時計を見て青ざめる。
「万理くん、送ってあげて。そして、ちゃんと戻っておいで。」
社長が柔らかい微笑みで言った。
「君の居場所は、ここにあるんだから。」
心に響く、優しい言葉。
はい、と応えて、事務所を出た。
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作者名:miz | 作成日時:2019年12月2日 8時