笑顔のキミが好き【千】 5 (ページ46)

今日:20 hit、昨日:1 hit、合計:23,033 hit

あの日の悪夢　2　～千side～ページ46

Aを、万を、助けたかった。
その一心で、あいつについていった。

万がいなくなって。
初めて自分がしたことを後悔した。

傍にいて欲しかった。
あの笑い合った日々を、思い出になんてしたくなかった。

Aはいなくなってないから、整形すればAとデビュー出来ると九条に言われて、心底腹が立った。

Aは、Aだから好きなんだ。

ずっと傍にいて、どうしようもない僕を怒って、一緒に笑ってくれた。
モモにお願いしてくれて、モモもAも、僕と音楽をやることを願ってくれた。

Aは万を引き止めず、再会しても僕らに万のことを黙っていたけど、モモの葛藤も、僕の葛藤も、万の葛藤も、A自身の葛藤まで全て心にしまって、包んでくれる強さ。

Aのその強さを知っているのは、僕らだけだ。
僕と、万と、モモだけだ。

全部、全部、僕らだけの人生だ。
僕らだけの、想いや、出来事だ。

僕が泣いているのを、ギョッとして慌てているTRIGGERも、合間に来たスタッフも、構わない心のまま、口を手で覆っていた。

「･･･僕と万のことを、肯定するのも、否定するのも･･･。僕とAのことを肯定するのも、否定するのも･･･。僕とモモのことを肯定するのも否定するのも･･･。していいのは、僕ひとりだけだ！」

想いを心のまま、口に出した。
溢れて、溢れて、止まらない。

「僕がしないんだから、みんな黙ってろ！･･･っ、何も知らないくせに･･･。僕が、僕らが、どれだけ･･･。･･･っ、どれだけ･･･、何も捨てたくなかったか･･･っ」

楽「･･･千さん･･･」

「何も知らないくせに、触るなよ！･･･っ、僕らが、誰も傷つかないよう、静かに、そっと、大事にしてきたものに･･･っ、めちゃくちゃに触って、僕を、モモを、Aを、万を、勝手に裁くな！･･･っ、うぅ･･･。ううー･･･っ」

Aがいたのに、いないことにされて、調べてもAの名前までは行き当たらない。

“私が元Re:valeって公表しよう。噂を流そう。”

きっと、こうなるって分かってたからだろう。

でも
それでも

守りたいんだよ。

勝手な憶測の中で、僕らの心のかさぶたを、勝手に剥がされたくない。

一通り心の中を吐露すると、少しだけ落ち着いて、ティッシュある？と聞くと、天くんが楽屋のティッシュを取ってくれて、龍之介くんが、ポケットからハンカチを出してくれる。
楽くんは、楽屋に置いてあるタオルを全部棚から出してくれた。