MOP前日 2 〜千side〜 ページ26
いや、何も言えなかったのかもしれない。
僕が口を開こうとしたその時、Aが先に口を開いた。
『・・・私は、いなくならなかったよ。千は何もかもは失ってないよ。私はずっと傍にいたでしょ?付き合う前も、付き合ってからも。』
「A・・・」
『ヤスだってば。』
僕が呟くように言った名前に、Aは苦笑いする。
『私は、運命を変えたくて手を伸ばしたの。千なんかのせいじゃないよ。万がいなくなる事は変わらなかったけど、私が勝手にやった事だよ。』
「“なんか”って・・・」
分かってるよ。
僕が気にしないように言ってくれてるだろ?
Aは優しい。
初めて会った時は、エレクトーンの腕だけに興味を持った。
僕を好きな様子もなかったから、続けられると思った。
出来るだけ、近づかないようにした。
想われると面倒くさいから。
でも、話してみると好みが合って、まるで万といる時のような心地よさ。
僕が好きにならないわけがない。
トラブルが尽きなかった僕に、ずっと呆れはするものの、傍にいてくれたのは、Re:valeが元々好きだからだと最近知ったけど、僕を少なからず想ってるからだと信じて疑わなかった。
今は僕に応えてくれて幸せだよ。
だからこそ・・・
「Aが勝手にやった事だとしても、これからの出来事に、モモやAが巻き添えになるのは嫌だよ。月雲が自滅するのはどうでもいいし、自衛隊に囲まれた怪獣みたいに、無様にやっつけられてしまえばいいけど。」
「・・・あはは。大丈夫だよ!オレ、高層ビルじゃないから!どしーんって倒れる前にひょいっと避けるし!」
「スーパーマンみたいに?」
「そうそう!光線出して応戦するよ!」
モモは笑って楽屋を出て行ったけど、Aを見ると、その表情は曇っていた。
「どうした。やっぱり何かあるのか?」
『何かあるっていうより・・・いや・・・』
どんどん小さくなるAの声。
Aに寄って顎を掬うように触った。
「へえ。僕に隠し事?」
『違う違う!』
「危ないこと考えてないよね。」
『考えてない、考えてない!』
以前は、こうやって顔を近づけると、軽く睨まれたり呆れた顔をされたりしたものだけど、最近はほんのり頬がピンクに染まる。
【こういう変化は嬉しいよね。】
そう思ってお互いに目を閉じようとしたと同時に、ドアが開いた。
「!!すみません!」
閉まった。
「『・・・・・・。』」
Aと見合って笑って、おかりんを中に入れた。
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作者名:miz | 作成日時:2019年10月17日 8時