愛される資格 ページ1
千からの4つの条件の後、提示された5つめは、半同棲だった。
「ここは、僕の家に帰る時以外の日に、帰ってくればいい。それ以外は・・・一緒に暮らそう。僕には、Aが必要だ。曲の記憶がなくなるまで、今まで以上に会えないなんて僕が嫌だ。」
・・・・・・いいの?
私、もう、千に愛される資格なんてないと思ってるんだよ?
まだ想ってほしいなんて、贅沢じゃない?
“負い目や引け目を感じて欲しくない。”
だとしても。
恋人として付き合っていく事は、また別問題だ。
愛される資格が、どうしてあると思えばいいの。
『・・・・・・本気なの?』
「本気じゃないと、ここまでしないよ。」
千が鞄から茶封筒を出して、中から1枚の紙を出して、テーブルに広げた。
「婚姻届だ。おかりんにはサインを貰っている。」
【ここまで、気持ちが変わらないって言ってるの・・・?】
信じられなくて呼吸が浅くなる。
唇が震える。
千が百に、証人欄に記入してと言った。
「今すぐじゃないよ。こうでもしないと、Aは僕にずっと負い目を感じるかもしれないでしょう。恋人でい続けるなら、対等じゃないと意味がない。」
確かにそうだけど。
【・・・千が好きだから。だからこそ余計に、愛される資格なんかないと思っちゃうよ・・・】
私の思いを口にする事もなく、千は続けた。
「こんな紙切れ1枚で、気持ちが揺るがないとか信用しろとは言わないよ。こればかりは、前以上に愛し合っていきたいと思う。だからAが不安にならないための約束だ。Aの、“気持ちは変わらないでとは言わないけど、どう思うのか知りたくはある”という言葉の答えだ。」
『私・・・ここまでされる程・・・』
愛されるような人じゃないよ・・・?
私の言葉に、千の目つきと口調が厳しくなった。
「それはどういう意味。自分を否定してるのか。それとも僕に対して恋愛感情よりも、メンバー愛や負い目の方を強く感じるから?ただ付き合いが長いから情があるだけか。・・・・・・Aは僕とこれからどうなりたいの。・・・僕はAと恋人でいたいし結婚もしたい。僕以外の誰かがAに触れるなんて絶対に嫌だ。」
【どうなりたい・・・そんなの、決まってる。】
千が百から婚姻届を受け取って、ボールペンを持って、震える手を反対の手でおさえながら書いている。
・・・どうしてここまでするの。
先端恐怖症なのに。
『・・・っ』
こんなに愛されてたなんて
私、分かってなかったよ・・・
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作者名:miz | 作成日時:2019年10月17日 8時