僕らを届けよう 3 ページ17
百と一緒に天を止めに行く事になった。
「ユキ１人でいいかな？」
『私が上手く曲に携わる事が出来るならいいけど、そういう訳にいかないでしょ？』
「そうなんだよなぁ･･･」
『それにデモ出来てないけど、何となくなら伝えられるかな。曲。』
「そっか。」
『うん。それで少しでも進めば良いでしょ？』
百は嬉しそうに頷いて、TRIGGERのいる部屋を開けた。
くつろいでる天がいた。
「天、いつもの完璧主義はどうしたんだよ。踊ろうぜ？」
「そうそう。ほら、ここでターン入れた方がいいかな？」
「知らない。仕事がきちんとあった上でボクは仕事をするんだ。存在する曲のイメージもないまま表現する事は出来ないよ。そもそも曲のイメージがブレブレじゃ、やりようがない。」
百と目を合わせて苦笑いした。
「やっほー！天、ごめんなー。ユキも煮詰まってるんだよー･･･」
『龍、ごめんね。千が勝手に送っちゃって･･･』
「ヤスさんの話し方じゃなかったんで気づきましたよ。」
『それで、決定したテンポと雰囲気を話しに来たんだけど･･･』
私が言うと、３人が身を乗り出して近づいてくる。
「「「完成したんですか！？」」」
「『それはまだ。』」
一瞬にして落ち込んだ空気が漂う。
『でも、すぐ完成するよ。これから教えるから、テンポは叩き込んでね。』
そう言っても、すぐには信じてくれなくて、それでも構わず床をエレクトーンの代わりにしながら叩いた。
静かな室内に、床のトントンという音だけが響く。
誰も一切口を開かなかった。
・
パタンとドアを閉める。
カメラマンさんも設置してあるカメラもない廊下を歩く。
「すごかったなー。」
『ん？』
「頭にある曲、もう全部楽譜に出来てんの？」
『ああ、うん。千を初めて見て倒れて、退院してからかな。記憶にある曲は、全部楽譜におこした。今より全然知識がなかった時に作った物だけど、納戸にあるよ。ファイルにして、鍵付きのケースに仕舞ってある。』
「じゃあ、記憶なくなっても知ることは出来るんだ？」
『いや、出来ないよ。』
「何で？」
『その鍵は捨てた。』
「えっ！？それこそ何で？」
『千に記憶を教えないのと、同じ理由かな。』
そう言って笑うと、百も、そっか･･･と、それ以上何も言わなくなった。
これからの代表曲も今までの曲も全部アレンジ済みで楽譜も作ってる。
ただ、見れないようにしてるだけだ。
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作者名：miz | 作成日時：2019年8月4日 7時
