笑顔のキミが好き【if･･･大神万理】2 (ページ36)

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Aはまっすぐ百くんを見て言った。

『千には言わない。天国か地獄を見る。』

「なんで。」

『千は、今まで自分の精一杯で曲や歌を生み出してきたの。それがレールの上の物だと知ったらどう思う？』

「あ･･･。」

『それが地獄。一番知られちゃいけないと思う。ヤスの存在と同じだよ。･･･ううん。下手すればそれ以上。』

百くんが、天国は？と聞いてきたので、俺が答えた。

「そりゃあ、Aが千にとっての女神になるだけだよ。」

「女神ってどういう意味ですか？」

「あいつは、神にも虫にも愛される曲を作りたいという位の精神でやってるんだ。」

昔からそうだ。

自分よりも、自分から生まれる曲が愛されればいい。
それで十分だと思っている。

それは千の境遇からくるものだってあるだろうし、千の中身よりも外見で言い寄ってくる人が多かったから余計にそう思うような節がある。

だから千が、Aを本気で好きになったと気づいた時には、中身も見てほしいという感情が芽生えているはずなんだけど。

そこばかりは分からない。
振られっぱなしだったから。

･･･しかも、俺と付き合うことになったしな。

【人生ってどうなるか分からないな。】

Aも、Aが関係する所は分からないから。
だから、良いんだけど。

『神に愛されたからRe:valeを続けることが出来たんだと解釈されれば良い。千はどっちに転ぶか分からない。だから言わない。それに、さっき言ったように前世の生活の記憶が、ほとんどないから。ゲームの記憶は今の所あるけど分からないし。』

「やけに冷静だね？怖くない？記憶がなくなるって。」

『怖いよ。冷静なんかじゃないよ。』

Aは悲しそうに笑う。

【やっぱり、怖いよな。】

運命を変えようとするのも。
前世とはいえ、記憶が少しずつ消えていくのも。

【でも囚われてほしくないと思うのは、俺のワガママなのかな。】

俺が、想いにふけてる間も2人は話している。

タイミングを見て、事務所で鞄に入れたファイルを出してテーブルに置いた。

「これさ、3年半位で俺なりに色々調べたことなんだ。前世の記憶を持って生まれる人って、全日本人の20%いるらしいよ。」

そう言ってルーズリーフを見せた。

大体が8歳位から記憶が消えていく。個人差はあるけど本人の心の成長や前後に特別な出来事があったりするのが忘れる前兆だとか説明した。

百「2年半位前って何あった？」

『え･･･』

Aが固まった。

2年半位前？