笑顔のキミが好き【百】 15 (ページ10)

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チョモランマ　3 ページ10

あ。私も万に謝らなきゃいけない事があった！

顔をあげると、２人が“未完成な僕ら”を歌うかどうかの話をしている。

【これもあったなあ･･･】

新しい、未完成な僕ら。

「大事にしてないわけじゃないよ。」

そう言って去ろうとする万の腕を取って引き止めた。

「何？」
『あのさ･･･つむちゃんの事なんだけど･･･』

どう言えばいいんだろ？
改めて謝るのって恥ずかしいな。

そう思ってると、万が困ったような顔をした。

【あ、やっぱ謝らなきゃ。】

「何？最近、紡さん忙しくて現場に行けないの知ってるだろ？」
『あ、知ってる。』

「マネ子ちゃんがどうしたの？」

千も不思議そう。

『いや、私、ずっと万がつむちゃんの事好きだって思ってて･･･でも違うんだって知ったから、今までからかって困らせて、ごめんなさい･･･』

どんどん声が小さくなる。
下を向く。

･･････。
ん？返事がない。
何とか言ってよ、と顔をあげると、バチッと万と目が合う。

「えーと･･･ナギくんが何か言った？」

『え？うん。万は、つむちゃんが対象だと思ってないよって。』

「それだけ？」
『それだけだよ？』

万が、ホッとしたように笑ってポンポンと私の頭を撫でた。

「そうか。ならいい。ヤスの中では“そうだった”んだろうから気にしてない。気にしないで。」

【私の中では“そうだった”･･･記憶の事、言ってるんだ。】

『良かった。ありがとう。』

「ヤス。先に楽屋行ってて。」

千に言われて分かったと言うものの、この後、楽屋で月雲了と、ヤスとして初対面だと思うと気が重かった。

振り返ると千と万が何か話している。

こんな風に２人を見るのは久しぶりだ。
初めて２人に出会った日のライブ。
10年前だと言うのに、昨日の事のように思い出せる。

前世の記憶が出てこなかったら、絶対に出会わなかっただろう始まり。

今の私がいるのは、記憶のおかげだ。

前世の生活の記憶や、Twelve Fantasia Tourの主要部分以外の記憶はなくなってしまったけど。
“私”が経験してる事は普通に記憶にあるから。

アイドリッシュセブンの記憶もあるから。

【今はそれで十分。】

千が万と別れてこっちへ来る。

「先に行っててって言ったのに。」

『いいでしょ。･･･何話してたの？』

「･･･Aは可愛いねって話。」

なんだそれ。

『誤魔化したい程言いたくないなら言わなくて良いよ。』

「ふふ･･･そうね。」

２人で楽屋に向かった。