5人で会食 3 ページ40
「ヤスさんは言いたいことあるのかしら？」
朝宮さんから言われると、思い出すのはヤマさんだった。
『では･･･差し出がましいようですけど、言わせていただきます。･･･私には、復讐を考えていた友人がいます。ずっと長く･･･10年以上苦しんでました。私とその人の付き合いは、その半分も満たないですけど、人を信じることが中々出来なくて、復讐心だけで、人を巻き込もうとしていました。』
志津雄さんを見ると、少し驚いたように目を見開いたまま、放心している。
朝宮さんを見ながら話を続けた。
『でもその人は、ちゃんと誰かを信じて、大事な人を大事にするために、復讐を止めました。･･･傷つくのは、復讐したい相手だけじゃないから。絶対に、復讐で幸せになる人なんて、私はいないと思います。虚しさもある。･･･朝宮さん。』
「何？」
『朝宮さんは暴露計画に加担して、その後どうするおつもりですか？他の人の家族や、罪のない人の事まで考えておられますか？』
「･･･ヤス。」
百が、たしなめるように私を呼んだ。
『だって･･･』
ヤマさんが。
ヤマさんがこれ以上しんどそうになるの、嫌だ。
ヤマさんは、たまたま二階堂の家に生まれただけなのに。
責任なんてない。
責任があるのは、こういう事を招いた大人だ。
それなのに。
ヤマさんを巻き込まないで。
【他にも傷つく人がいるのを、忘れないで･･･】
『･･････っ』
「ヤスがすみません。ちょっと落ち着く為に化粧室行っといで。」
百がおしぼりを私の目に当ててくる。
泣いちゃったからメイクが危ないんだろう。
ポーチを持って礼をして謝って、スタッフに化粧室に案内してもらった。
『･･･はあ･･･』
何やってんだ、私。
責めようとしてた。
駄目じゃん。
だってヤマさんは、ちゃんと分かってたんだよ。
復讐が大事な人を傷つけるって。
だからずっと、あのオーディションからずっと苦しんできた。
記憶にあるんだから、ヤマさん以外の誰より知ってる。
でも、IDOLiSH7の皆も、TRIGGERも、百も千も、ちゃんとヤマさんの事を解ろうとして、その上で大丈夫だと背中を押して。
やっと幸せだと思えたヤマさんに、苦しみを与えて欲しくなかった。
【仕方ないんだけどさ。さすがに朝宮さんに、ヤマさんの話は直接的に出来ないわけだし。】
メイクを直して化粧室を出ると、志津雄さんとバッタリ会った。
先に戻る事を言うと、志津雄さんが言った。
「１つだけ君に聞きたい事がある。」
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作者名：miz | 作成日時：2019年6月4日 7時
