笑顔のキミが好き【百】 15 (ページ28)

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ヤスのMVドラマパート撮り　2 ページ28

「ヤスさん。Ｍissionの映画の、Aさんはこんな感じなんですけど･･･」

監督に映画のラスト周辺のシーン映像を見せられた。
カメラチェックもしてたから見なくても知ってるけど、真面目に観ておく。

後ろからグルッと大きく横から斜め前まで撮られて、静かに涙しながら犯人を想っているだろうシーン。

「同じにしようかと思ってたんですけど、銃声の所で顔を上げる画がいいという意見があって。」

『銃声は実際聞こえてるんですか？』

「銃声の一瞬前のシーンで聞こえてないです。何となく感じてる風で。風を後ろから送るので、長い髪が空に溶けるような時に銃声がするイメージで･･･ええと、分かりますか？」

新しいMV構成の決定稿を見る。

『空を撮ったら、犯人役の百が倒れて･･･って、構成案とラスト逆にしたんですね。』

「後の変更点は、最後だけの出演だと役の存在感が弱いので、最初もですね。」

『百と千の対峙の一瞬前の祈りですよね。』

【これなら大丈夫かな。】

泣かないだけでだいぶ安心する。

『OKです。』

「はい。じゃあ始めましょう。」

機材やらの準備はされていて、撮影が始まった。
祈りのシーンは簡単に終わったのに、髪が空に舞い上がるシーンがうまくいかなくて、何度も撮り直し。

【ボサボサ･･･】

ヘアメイクさんが何度目かのヘアセットをしてくれる。

「大変ですね。でもヤスさんの髪の毛、サラサラなんで櫛通りが良くて私には助かります。」

『そうですか？』

「はい。サラサラじゃない人は大変ですよ。こういう度に絡まって、ほぐすのが時間かかって撮影が圧すんです。」

ヘアメイクさんがそう言って笑う。
確かに絡まったら大変だろうな。
髪質って大事よね。
長いと大変。

でも髪の毛を切るには、色々な問題が発生してしまう。

イメージ。
後はヤスとAの差別化の問題。
カツラだと人によってはバレてしまう。

撮影が終わると、監督さんが言った。

「ヤスさん、演技の勘いいですよね。演技されないの、勿体ないと思うんですけど、今度僕のドラマ出ませんか？脚本もまだの段階ですけど。」

直接言われるのは初めてだ。
いつも、おかりんとか事務所スタッフが断ってくれていた。

『えと･･･私の一存では出来ないので、事務所通して頂けませんか？』

「うーん･･･事務所はNG貫いてるからヤスさんに言ったんだけど。少し考えておいて下さい。」

【困ったな･･･】

去っていく監督の背中を見送りながらため息をついた。