笑顔のキミが好き【if･･････二階堂大和】3 (ページ45)

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【俺が泣かせた･･･】

床に落ちた指輪のついたネックレスを拾う。

クローバーのネックレス。
真実の愛。

Aには言わなかった意味。

指輪もプロポーズの予約っつって、はめたのに。

嬉しそうにしてくれたのに。

【嫉妬で、あいつを疑った。】

お風呂のドア越しでもいいから一刻も早く謝りたくて、浴室の前に立つ。
何て言ったらいいのか分からない。

シャワーの音に紛れて、嗚咽のような声が聞こえた。

「･･･っ」

名前を呼ぼうとした時、小さい声が聞こえた。

『百･･･っ。』

【！！】

駄目だ。
俺じゃ、駄目だ。

やっぱり、Aと顔を合わせたくなくて寝室に行く。
Aが寝入ってから風呂に入ればいい。

別れたくない。
でも、Aの為に。
俺よりも百さんの方がいいに決まってる。

元々一番は百さんなんだろ。

人として一番は百さんだと言ってた。

「･･･っちくしょ･･･どいつもこいつも･･･」

“俺を愛して”

自分から、愛されようと努力をしないのに。
分かってる。

怖いんだ。
拒絶されるのが。

千さんみたいに何度振られても言い寄る強さなんざ元々ない。

“大事なモノが出来た時、苦しむのは自分だから”

出会ってそんなに経ってない時に、Aに言われた言葉。
今がその時だ。

【でも、別れたくない。】

涙を拭いて、どうすればいいか考えていた。

いつの間にかウトウトしてて、気付けば夜中。
風呂に入るかと思ってリビングにいるだろうAに警戒するも、Aはいない。

･･･作曲でスタジオか？

風呂からあがると、千さんがソファに座っていた。

「大和くん。」

やけに冷たい表情と声の千さんに、足がすくんだ。
俺の前に立つ。

「君は覚えている？以前、僕が言ったこと。」

「言ったこと？」

「Aを泣かせたら僕か百がさらう。何があったかは聞かない。けど、つまらない一時期の感情で彼女を振り回すな。迷惑だ。」

【つまらない一時期の感情･･･】

嫉妬で傷つけただろうってのはバレてんのか。

「彼女を守る覚悟もない奴に、僕たちの大事な人を預けられないよ。恋愛ごっこなら直ぐやめろ。･･････頭を存分に冷やすんだね。」

千さんが言ってからスタジオのドアノブに手をかけて言った。

「君が志津雄さんの息子じゃなく、撮影中じゃなかったら、躊躇なく首を締めてたよ。」

温まったはずの体が、一瞬にして冷える。

【Aを守る覚悟･･････】

ギュッと拳を握って、唇を噛んだ。