ユンギのお気に入り (ページ29)

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「ところで、Aちゃん…」

『はい、なんですか』

「昨日は大丈夫だったの？」

『……え、っと……、』

不意をつかれて言葉に詰まっちゃった…。

絶対に訊かれると思ってたから

なんて言うべきか

ちゃんと昨日の夜考えたのに

肝心なときに……出てこない。

「やっぱり何か言われた？…だとしたら、俺のせいだよね。ほんと、ごめんね？」

『いえ、全然そんなことありませんから…それに、』

「それに…？」

『なんにも言われませんでしたから…。』

「ほんと？」

『はい、ほんとです。笑』

ほんとかな…って、イさんは疑ってたけど

これは、ほんと。

なんにも言われなかったし

なんにも言ってくれなかった…。

"『お世話になりました』"

最後だからちゃんと

相手の目を見て言いたかったのに

目すら合わせてもらえなかった……。

面と向かっていつものようにガミガミと言われた方が

まだマシだったかもしれないなぁ…

なんて思ったりもして

すぐ傍にいるのに

目の前にいるのに

いないように扱われる方がもっとツラいんだって

このとき、初めて知った……。

でもちゃんと切り替えなきゃ。

ここでの仕事が

夢への第一歩になるって思ったら

へこんでばかりもいられないしね。