虚空を斬/る (ページ4)

今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:71 hit

︎ ✧ ページ4

｢そんなところじゃなくて、ベッドお休みになってください。…ほら、肩を貸しますから。｣

｢……おう。｣

本当に素直になってしまった。
1歩、1歩、彼のペースに合わせて歩いていく。
ベッドがある私の部屋は、幸いリビングから近いところにあるため、苦しい思いを長い時間させずに済んだ。
ベッドに座らせて楽な姿勢で寝かせると、彼ははぁ〜…… と大きな溜息をついた。

｢お疲れ様でした。1度寝てしまってはどうですか？まだお昼ですし。｣

｢せやな…寝かせてもらうわ。｣

｢はい。では、後程起こしに行きますので…｣

ベッドから離れようとしたその時、コネシマさんに腕を掴まれる。かなり弱い力だったが掴まれた場所から伝わる熱は心地よかった。

｢お前、名前は｣

あぁ、そういえば言ってなかった。自分だけ名前を聞くだけ聞いて言わないのは昔からだ。失礼な態度をとってしまった、と反省する。でも、私の名前を知ろうとしてくれてることが、とても嬉しかった。

｢……A。Aです。｣

こうして、私達の不思議な縁が結ばれたのだった。

｢コネシマが帰ってこない？｣

玉座に座る男は、昔から馴染みのある仲間の言葉を興味ありげに復唱した。

彼の前にある円卓には数名の男達が座っている。
ある者は我々国の書記長。ある者は外交官……様々な役職を与えられている、我々国の幹部が集合していた。

｢そうなんよ、いや〜やっぱり飛ばしすぎたか〜あれは。キレ〜〜に吹っ飛んでいったもんな。｣

軍帽で目元が見えない男は面白かったと言わんばかりにその時あったことを嬉々として報告する。

｢いや〜久々にみたわあんな吹っ飛ぶヤツ！でも今回のは流石に威力が強すぎたし、かなり叫ばれるんちゃう？｣

隣の可愛らしい豚のピンをつけた男はつられて笑いながらも、行方不明になった彼からの制裁があることを示唆し、面白がっている。

｢いや〜、部長捜索イベ頻繁に起きますね！｣

｢毎回あの人の捜索で軍資金使うのも勿体ないし、いないと困るんでさっさと探しましょ。｣

この中では歴が短いであろうものも発言する。いじられ役とはいえ、彼がいないと回るものも回らないらしい。

｢…ふむ。｣

玉座に座っていた男……この国で総統と呼ばれる男は顎に手を当て不気味な笑みを浮かべる。それを見た書記長は思わず身震いする。

｢何や…お前｣

｢……森の才女か、森の魔女か。｣

総統はこれから訪れる邂逅に、思いを馳せていた。