虚空を斬/る (ページ2)

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｢……大丈夫じゃないのはわかってますが、一応聞きます。

大丈夫ですか？｣

｢大丈夫だったら見ず知らずの一般人の家に入っとらんわ。｣

一人暮らしを初めて数日。
遠くで爆発音が響いたかと思えば叫び声とともに落下し、様子を見に来た私の目の前で見事な地面とのディープキスを果たした人。

金髪が目立つなんとも少年のような見た目の彼、コネシマさんは目を合わせず、不貞腐れた顔で私の手当を受けていた。
頭をうち、切り傷、擦り傷だらけの彼に母親から教えてもらった適切な処置を施していく。

私の家は森の付近には誰も住んでいない、1人を満喫できる最高のスポットなのだが、最近は森で軍事練習が行われている為、銃声や爆発音が絶えない。
ようやく静かな生活ができると思っていたのにこのザマである。
隣国からの宣戦布告があってから今日まで、忌まわしい音が耳を打ち付けるのは止むことはなかった。
その為、彼らが一概に悪いとは言えないものの、軍人や政府に対して多少不満を抱いていた。
なので。コネシマさんが落ちてきた時は一瞬知らないフリをしようともしたが、流石に怪我をした人は見捨てられず家に入れてしまった。
最初は私を見るなり警戒心を剥き出しにしていたコネシマさんは自分の怪我の状態を認識し、渋々私の家で手当を受けてくれた。なんだか、近所のやんちゃ少年を相手にしているみたいで苦笑する。生まれてこの方、あまり同級生との関わりを持たなかった私にとってはこの感覚が少し心地よい気もする。

｢今日は爆発物を用いた練習だったんですね。｣

｢……せや。｣

｢戦争が近づいて焦る気持ちは分かりますが、あまり躍起になって大怪我するのは……｣

｢一般人のお前が口出しすることやない。｣

｢それは…そうですけど。ただの一般人も死地に赴かんとする貴方たちが心配なんですよ。｣

というとさらに機嫌を悪くする彼。
……まぁ派手にぶっ飛ばされた挙句、唯の一般人である私に慈悲をかけられるというのは、彼にとってはあまりよくないことなのだろう。

しかし、この様子では戦争に行く前に死んでしまう。

どうしたものか、と彼の頭に包帯を巻きながら考える。彼は俯きながら、ブツブツと何かを唱えている。
…………のせいや……なければ……みたいなことを何度も。
彼の疲労はかなり溜まっていることが伺える。

｢……あの、コネシマさん。｣

私は彼の迷惑になることを承知で、次の言葉を紡ぎ出した。