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威嚇 ページ7

「警察が、それも組織犯罪対策部巡査部長なんてお偉いさんが何の用で?」

「別にあなたを捕まえに来た訳ではありませんよ。本当に。電話で話した通り、10年前に起きた銀行強盗事件についてお聞きしたいだけなんです。」

先程の貼り付けたような憫笑が消えたことから言っていることは本当なのだろう。少なからずとも周りから足音が聞こえないことからも、一人で来ていることは確かだと確信する。警察手帳も偽物かどうかの見分けがつくので、彼の言っていることが嘘ではないという推測に至る。
その上でAは意図を聞く。本当に情報を提供してもいいのか、見分けるように、見透かすように。その者を眺める。

「その意図を聞いても?」

「当時の主犯は捕まったのですが、その場に居た共犯者が現在も逃亡中で違法ドラッグなどの組織犯罪に手を出しているようなのです。過去の捜査資料を漁ったのですが、その事件で何かしら警察側に不利益となることが起きたようでその捜査資料がもみ消されているんですよ。」

そのお陰でこっちは行き詰まっています。と億劫そうに警察手帳を仕舞った手をぶらつかせる。

「なので、ご協力頂こうかと。」

「成程。ですが、警察である貴方が裏社会で取引するなんてバレたら大変なことになりかねませんよね?」

「その時は揉み消したらいいんですよ」

Aと距離を取った先で同じように背を預けた彼は煙草を取り出し、吸ってもいいかと尋ねるようにトントンとそれを揺らすのでAは承諾の意を込めてコクリと頷く。

「悪いお方だ」

「貴女も変わらないでしょう」

上方に吐き出された紫煙は夜空の中に幾何学的な模様を描いて消えてゆく。ヘルメット越しに、香のような微かな煙草の香りが鼻腔を掠める。

「入間さん。その事件の情報は提供するに値すると判断致しました。ですが、ここで話した情報は門外不出でお願いします。」

Aは彼からの返事を聞くことなく、ヘルメットを取り払って、ひとつに束ねていた髪を解く。
そこに吹き込んできた潮風は紫煙を乗せてAの髪をすり抜けて闇に溶け込んでゆく。

「当時犯人を射殺したのは私です。私が覚えている限りでも構わないならすぐにでも提供出来ます。」

銃兎が驚いて目を見開くと同時に、灰へと化した煙草はパラりと地面に落ちる。だが、その整った顔はどこか嬉しそうに、懐かしむように微笑んだ。

「貴女だったのですね、随分と凜然とされたようで」

「…………え?」

警察のお兄さん→←兎と猫。



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雪@そらなー - 鵠さん» 作ったよ〜!裏切り+愛=呪いで検索かけたら出ると思う! (2018年12月12日 20時) (レス) id: a70a7db5f1 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 相澤雪さん» ありがとう!もし作ったら教えてね (2018年12月7日 22時) (レス) id: c75e48906d (このIDを非表示/違反報告)
相澤雪 - めちゃめちゃ参考になった!更新頑張って!! (2018年12月7日 15時) (レス) id: a70a7db5f1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2018年12月3日 22時

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