針、93本。 ページ43
その後は大変だった。アドバイスを求めにきたオレンジくんに牙を剥く国見と金田一を宥めるのが。
2人に送って貰っている間も心做しかピリピリしていたし…。
「へー、向こうでそんなことしてるんだ」
「まあ私の話はいいんだけど、及川は国見と金田一に何吹き込んだの?」
翌日の朝。仲良く3人での登校。
顔を合わせた瞬間から、昨日はどうだった?なんて矢継ぎ早に質問され続けて数十分。
私にだって聞かせてくれ、1年生に何を言ったのかを。
「それはほら、後輩としての義務を果たしてねっていう」
「ボディーガードが義務とか初知りなんだけど」
「知らなかったのか?」
「えっ岩泉までそんなこと言うの?」
知らなかった。後輩は先輩のセコムをするなんて義務あったんだ。ってそんなわけないだろ。
聞いても聞いてもはぐらかされるばかりで、結局諦めてしまった。
「…にしても、影山がAの話するなんてな」
「後輩に好かれすぎちゃうなんて罪な先輩だわー私ったらー」
「ほんと及川っぽいからやめた方がいいぞそれ」
「トーンがガチ」
シリアスなのかボケてるのかよく分からない会話に、及川は混ざってこない。
とても悲しそうな目で私を見て、一言だけ。
「…ごめん」
眉を下げて、少しだけ唇を噛んで。
なんだか無性にイラッとした。なんでそっちが落ち込んでんだ。
背中をばんっと思い切り叩いて笑う。
「何回も大丈夫って言ってるじゃん。次同じことしたらグーで殴るからね!」
いつもならふざける及川は、この話になった時だけ絶対に笑わなくなる。
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作者名:観月 | 作成日時:2021年1月8日 22時