約束。2【及川徹】 (ページ31)

今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:25,414 hit

針、81本。ページ31

「…Aは、どうしたい？」

春高予選、準決勝敗退から、烏野が白鳥沢を倒してから、数日。貴重な昼休みに、私は監督とコーチの2人に呼び出されていた。

完全個室の相談室へ。最初はまじで何かやらかしたっけって本気で考えた。校則破るような真似してないから余計焦ったんだけど。

話はなんてことない。

「私、残ります」

多くの3年生は夏のインターハイを境に引退する。私たちバレー部は毎年、インターハイ、春高予選のそれぞれを目標に引退する人が多い。

だけどスポーツ推薦を使う人や、ごく稀にいる、プロ志望。そういう3年生は大会が終わったから引退する、なんてことは無い。

でも、そもそも選手じゃない私が、じゃあなんで残りたいのかって話。

「大学は指定校推薦が貰えそうですし、マネージャー業自体が受験勉強って言っても過言じゃないので」

「そうか…」

私が目指す大学の学科は、スポーツ科学科。

及川との約束を果たす、だけじゃない。

私自身の夢のために。

それは3年間かけて、みんなから教えて貰った大切なもの。

「…あの、これ聞いていいか分からないんですけど…」

「なんだ？」

「私の他に、残るって言ってる3年生は居るんですか？」

こうして1人ずつ個室に呼んでまでしているプライベートな話。
でも、どうしても気になった。

「…あぁ、まあ」

幼なじみといえど親しき仲にも礼儀あり。なかなか踏み込めない心の奥底には手が出せなかった。
及川にも、岩泉にも聞けていない。

残るかどうか。