針、62本。 ページ12
…そうは言っても、部活内に溶け込めてないのは一目瞭然だった。壁に背中を預けて座る京谷。
一匹狼。
その言葉が今、似合ってしまう。
「…岩泉、唯一京谷が反抗できない先輩としてどうにか出来ない?」
「どうにかってなんだよ」
「…なんか。なんとか。こう、上手く」
「俺に出来ると思ってんのか」
「なんでそこで胸張んの?」
1年は論外、2年もダメ、3年も無理。私の出番ってか。
ボトルとタオルを渡しがてら頑張るとしますか…。
「京谷」
声は出さないけど、一応顔を上げて目を合わせてくれた。なんかそれだけでちょっと感動してしまう。
…なんて言うのが正解?
久々の部活どう?、いやいや、そんな甘いこと聞けないわ。
「前置きとかいらねぇっすよ」
ぶっきらぼうに吐き出された言葉。京谷なりの優しさかも。
「仲良くしろとは言わないけど、ある程度は協調してほしいかな」
やっぱり返事はない。差し出したボトルを雑に取り上げて、ごきゅっと大きなひとくちを飲み込んだ。
「…あとはスパイクね。助走の切込みは完璧だからネットにかからなきゃ大丈夫。練習見てびっくりしちゃった」
私が一方的に話してるだけ、に見えるんだろう。きっと傍からは。でもこれが実は会話出来てるんだよなぁ。会話って言えないかもしれないけど。
ちゃんと聞いてくれてるもん。
「これ、今月の部活の日程表。待ってるから」
差し出したプリント。少し躊躇うように見つめた後、指先で挟まれた紙は私の手元から離れる。
食い入るように日程表を見る姿。
大丈夫、ちゃんと部活には来る。
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作者名:観月 | 作成日時:2021年1月8日 22時