#１０ ページ11
北side
Aさんの眼に見つめられると、隠し事が出来なくなる。隠す気はさらさらないのだが、口が勝手に動いてしまう。
堰き止めていた何かを取り払った口は、自分でも驚くくらい流れるように言葉を零していった。
「……そんで、ちゃんとやれてるか、不安になってまうことが多くてな」
部活での立ち位置。プレーのこと。体調管理、そうじ、片付け、諸々……。
最近どこか感じていた調子の悪さ。他人に話したところでどうにもならないと割り切っていたはずなのに。
一通り話終わった俺は、恐る恐るAさんの方へ顔を向けた。
恐らく、誰でも驚く。
「怒っとんの？」
表情自体に変化はない。だけど確かに雰囲気には怒りを滲ませていた。
「信介くんは絶対
ちゃんとやれてないわけないねん。1年半と部活の腐れ縁で繋がっとる私の言葉じゃ信用出来ん？」
怒られてるのに褒められているような、不思議な感覚に襲われた。それと同時に、心にかかっていた靄が無くなった気もする。
吐いた息は大きな霧に変わってすぐに消えた。
赤掛け空色に染まった空を仰ぐ。
「……Aさんの言葉は、重たいなぁ」
「茶化さんでよ」
「茶化してへんよ。話聞いてくれてありがとう」
手に持っていた半分の肉まんはもう無くなり、空を覆う紺色は徐々に広がっていく。
暗がりの中で見えたひとつの明かりはAさんの笑顔だった。
小さい頃、
理由もなく憧れていたヒーローは、
すぐ傍にいてくれたんだと思い知った。
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観月(プロフ) - 倫太郎さん» ありがとうございます…！そう言っていただけると本当に嬉しいです！！頑張ります！ (2020年12月8日 17時) (
レス) id: d67a3f96a5 (このIDを非表示/違反報告)
倫太郎(プロフ) - コメ失礼します！いつも観月さんの作品、楽しく見させて貰ってます！これからも頑張って下さい！ (2020年12月8日 10時) (レス) id: e7965c6e0f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：観月
| 作成日時：2020年11月27日 22時
