もしかして… ページ33
山田side
山「凶悪犯しか...殺さない...。」
伊「そ。依頼動機は全部自分の大切な人の復讐だってよ。」
ほんとだ...。子供、親、恋人...全部自分以外の誰かのためのものだ。
いのちゃんから受け取った光くんのファイルを見ながらそう思う。
伊「...でさ、どうすんの?方針変えるの?」
「は?何言ってんの、帰るわけないじゃん。」
さっきまでの俺だったらこう言ってた。
だけどあんな書き込みを見せられて、あんな話までされちゃったら…。
山「...考えとく。」
もう晩ご飯を作らないといけない時間だから、この話は切り上げてキッチンに行く。
今日の晩ご飯はミートグラタンにしよう。
あと野菜スープ。
作っている間も、ずっと今後のことを考えていた。
距離を縮めなければいけないからといって、光くんの言う通りにする必要は無い。
ずっとこのやり方でやって来たんだし、依頼者もターゲットもその周りの人達も俺には関係の無いことだから気にする必要も無い。
だけど、
あの書き込みやお母さんのブログを見た時の、胸の奥が温かくなるような感覚。
俺達の生活とは違って、平和で本当に幸せなんだろう。
あれを見て、殺さなくてよかった、と思う自分もいる。
腹パンされたのに。
それにね、
光『残された家族は、殺された理由も分からないまま、殺したやつを恨み続けて生きていくしかないんだ。』
こう言った時の光くんの目。
真っ暗で、何も写っていない。目の前にいる俺すらも写していないような目が忘れられないんだ。
言葉のひとつひとつが重くて、光くんはまるで実体験かのようにそう言った。
光くん、もしかして──
山「いや、考えすぎか…。」
家族や大切な人を、殺されたんじゃないの?
そう考えたけど全て想像に過ぎないし、考え事の論点がだいぶ外れているから、気を取り直そうと野菜スープをぐるぐるとかき回した。
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作者名:みー | 作成日時:2017年3月2日 16時